『変身』
「そのドレッサーてやつは本当にすごいな」
今日も今日とて一瞬で姿を変えた自分を見ながらシドーが感心している。
気になるならシドーも使ってみる?
「いいのか?」
もちろん。
するとおそるおそるといった感じでシドーがドレッサーの前に立つ。映るんだな、とぽつりと零れた一言はあえて聞こえなかったことにした。悲しかったことを無駄に掘り返したくはない。
ぺたぺたと鏡を触りながら「おお……」と己の姿を見ているシドーは少しおかしくて、ふふっとなりながらも、気付いてしまった。いつも何気なく鏡に表示される選択が、シドーの前にも映っている。
『おとこ』『おんな』
これは。……これは……いやいやそんな勝手にやっちゃいけないし。でも気になる。ものすごく気になる。これを選んだらどうなってしまうのか好奇心が疼く、が、いやいやいや……。
「……なにを呻いているんだオマエ」
大丈夫か?と心配してくれる優しい友よ。不埒な自分を許してほしいです!
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○○を使わない140字小説お題210122