『エスカレート』
元よりいつでもどこでも一緒であったビルダーとシドーだが、この島を覆う暗闇が晴れてからはよりいっそう仲睦まじくなった。何かを創っては壊し、ご飯を食べ、風呂に入り、ベッドで眠る。
それがふたりにとって、ひいてはこの島にとっての自然であったから、誰もなんの疑問を持たずにいた。
しかしある日のこと、新しく島にやってきた住人にふたりの関係性を突っ込まれ、あれ?もしかして感覚毒されている?と気づいてルルは少し焦った。
注意しないのはふたりにとってよくないことかしら。でもこの島はルルたちのものだしどこかに移住する予定もないし、そもそもこの世界自体あのふたりが壊して創ったんだから、常識云々を押し付けるなんてそれこそおかしい話よね……。
まあきっとあの住人も、ここで暮らしているうちに慣れるだろう。
海に囲まれ、豊かな畑が広がり、鉱石で彩られたバー、白銀にそびえだつ城、山の上に建つ神殿、共に絶望を乗り越えてきた仲間たち、女王たるルル、そしてビルダーとシドーがいる。
それがからっぽではなくなった、この島なのだから。
お題元→
○○を使わない140字小説お題210130