祝福と愛をつかみゆく
「どうしよう」
「どうした?」
隣にいる彼の声は、いつもと変わらないものだった。落ち着いた優しいそれに、憎たらしく思うときもあったけれど、それでも旅のあいだずっと、楽しいときも苦しいときも支え続けられた。
「…今の僕、世界でいちばん幸せなんじゃないかなって思って」
隣にいる彼の手は、いつもと変わらないものだった。盗むことしか出来ねえんだと言っていたそれに、いつだって力強く掴まれて、ここまで来られた。
「はは、残念だったな。お前より幸せなヤツがいるんだぜ?」
「えっどこに!?」
隣にいる彼の顔は、いつもと変わらないような、…初めて見たような。僕たちが守ったこの世界すべての美しさを、煌めきをそこに集めたように、笑っていた。
「まあ、つまり…その答えはオレってことだ」
180826
Clap
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