胸に残る一番星 | ナノ

  at the shoreline


 無邪気に水遊びをする相棒は微笑ましい。が、「カミュもおいでよ〜」というお誘いには首を振った。今日はあいにく海賊コートをつけているので、普段着ならともかくこの服だとパッとは脱ぎづらいのだ。ソルティアナ海岸沿いを歩いていたら、突然海に入りたい! と予定外のことを言ってきたイレブンが悪い。いや、もう急かされる旅ではないので何をするのも自由だけれど、それでも朝から予定してたなら相応の格好をしてきたのに。だからそんな不満げな顔されても困る。

「あ、じゃあこうしよう!」
「ん? ……っ!?」

 何を思いついたのか、イレブンはずんずんとこちらへ向かってきて、カミュをひょいと背負った。不意を突かれた形に焦る。おんぶされるのはこれが初めてではないが、ケガをしたわけでもないのに! ……と、恥ずかしがる暇もなく、その体勢のまま海へと突撃された。

「おい、イレブン……」
「これならカミュは濡れないでしょ?」
「……はあ、強引だな」
「えへ」

 イレブンが歩くたびに、澄んだ海水がバシャリと跳ね上がる。カミュの体重がプラスされた分、反動も大きいので普通に裾は濡れそうだ。まあこれぐらいならいいか。背中越しに見えるカオがずいぶん楽しそうだから。

「……お、何かあそこに宝箱見えるぜ、相棒」
「えっうそ見逃してた!? 行こうカミュッ」
「うわ、急に走るなって! おい、イレブン!」

 先ほどよりも勢いよく走り出すものだから落ちそうになって、慌ててしがみつく。この振動、真っ直ぐに駆けていくイレブンに何だか既視感を覚える。何だろう……ああそうだ、サマディーのウマレースだ。ウマみたいだなんて、勇者さまに失礼だろう、と思いつつも可笑しくなってしまった。



「あ〜〜予想はしてたけど、もう特に使わないものだった……」
「はは、残念だなあ」
「って、なんで君はそんな笑ってるの」
「さあな」
「カミュが楽しいならいいけどさあ」

 もっと他にもないか探そう、とイレブンはお宝探しを続行するらしい。カミュをおぶったままなんて、ぜったい非効率だけれど。周りをふよふよ漂ってるドラゴスライムだって、邪気を抜かれて襲う気配もないし、まあいいか。




たにまさん(@brbrmoe)のイラストから小話書かせてもらいました!
素敵な元絵はこちら→https://twitter.com/brbrmoe/status/1436287905857638405

210907

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