喉がカラカラなう
「あれ?」
もう寝ようと思って自室に行くと、先に眠ると言っていたはずのNがいなかった。
…あ、洗面所から水音が聞こえる。そこに向かうと、うがいしているNの姿があった。コップに水道水を注ぎ、苦しそうな顔で何回もすすいでるものだから、心配して声をかける。
「N?大丈夫?」
「…ああ、トウヤ」
キュッと蛇口を閉めて、Nは振り向く。手を喉に当てながら、僕を見て微笑んだ。
「大丈夫だよ。少し…喉が痛いだけだ」
「ホント?…口開けて?…あ、やっぱり、ちょっと腫れてるな…」
「…大丈夫、だって」
「だーめ。…明日は、病院だね」
病院、と言う言葉に、触れている頬があからさまに硬直した。逃げないようにしっかりNの腕を掴む。
「Nが病院嫌いなのは知ってるけど、悪化したらどうするの」
「…だって、明日は」
「N」
「…どうしても?」
「どうしても」
「…ふう、こういうときは引かないよね、トウヤは」
「当たり前でしょ。僕はNに無理させたくないんだから」
「…わかったよ」
観念したらしい。だけどNはすぐに残念そうに俯いた。僕だって残念だけど、仕方ない。
「明日行く予定だったアイスパーラーは、治ってから行こうね」
「…うん」
そのためにまずは寝ようか。Nの腕を引いて、僕は自室へ向かって歩き出した。
これでもまだ友達。Nさん絶対病院嫌いだと思う。
(120611…ちょっと修正)
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