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  結んで開いて


Nの細くて骨張った指が、僕のネクタイと格闘している。
結んで欲しいなー…、なんて冗談っぽくお願いして、Nがそれを引き受けてから数分は経った。何かが納得いかないらしいNが、何度も出来たそれを解いては結び直してるからだ。最初は垂れ下がったネクタイを手に取って、静かに結び始めるNにドキドキしたりもしてたけど、流石に何回もやられると怪訝に思えてくる。
そしてまた、「これも違うな…」とか言って解こうとするNの手を僕は制した。

「トウヤ?」
「N、これじゃ駄目なの?」
「駄目だよ。少し曲がってたから、やり直さなきゃ。…やっぱり、自分のをやるときとは勝手が違って難しいね…」
「そんな、生徒指導の先生じゃないんだからさ」

普段のN自身を思い浮かべても、こんなキッチリやってたような覚えはない。私服ですらあるものをただ着るだけのNが、僕の制服のネクタイの何にこだわっているのかわからなくて首を傾げる。僕はさり気なく手を握って、Nを見上げた。

「だってトウヤ、ずっとこの制服着たがってただろう?」
「え?」
「“良いなあ”ってずっと言っていたじゃないか。それでせっかく着ることが出来たんだから、ボクはトウヤがより満足出来るような、一番良い状態に仕立てたいんだ」
「…ネクタイの、一番良い状態ってどんななの…」
「それはもちろん、トウヤが一番格好良く見える状態だよ」

何そのドヤ顔。脱力してしまった僕とは正反対に、Nはまた張り切って結び始めた。
…僕が着たかったのは、『Nと同じ高校の』制服であって、これ自体には何の感慨も無いんだけどな。良いなあって言い続けてたのも、それはNが着てることが…いいや、黙っておこう。Nの努力はいつもどこかズレていて、それがまたかわいい。

あーあ、これから高校の入学式でなければ、Nのネクタイも解いてるとこなのに。





学パロ。
学校行く前にNさんの家行ってたってことで!しかもちょっとでも長く一緒いるために朝早く。
あ、当初の目的(?)であるうっかりトウヤくんの首絞めちゃうNさん忘れてた。110325


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