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  Episode15


―ジャイアントホールの中から、夥しい冷気が吹き込んでくる。一体この中で何が起こってるというのかわからず竦んでいると、突如空から黒い影がこちらに降り立ってきた。影の正体は黒龍。その背に乗るは一人の少年。自分とそう歳は変わらなそうだ。顔は逆光で見えない。会ったこともない、知らないひとだ。
だけど、よく知っている。その瞬間に声は出ていた。

「――さん!きっとこの先です!」

行ってください、とは言わなかった。ただ指をさしただけだ。この先に何があって誰がいるかもわからないけれど、このひとが向かうべきなんだ、と何の理屈も根拠もなく確信した。

彼はありがとう、と言うと帽子を深く被り直し穴の中へ飛んでいった。その後ろ姿を見送るだけだった。

これはいくつもあるうちの一つの世界。
僕/私が主人公でなかった物語。



170127

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