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  この物語の主役はきみだった


強くなると決意した。
大切なものに何かあったとき、助けられるように。

そして、今がそのときだ。
チェレンは腰にあるモンスターボールを掴んだ。

「さあかかってきなさい!ワタクシはアナタの絶望する瞬間の顔がみたいのだ!」
トウヤに勝負をしかけてきたこの男と戦うために。

彼はNとのバトルを終えたばかりだ。二人の戦いーゼクロムとレシラム、2匹の伝説のポケモン同士のぶつかり合いがどれくらい激しかったのか、直接見ていなくてもわかる。この謁見の間に訪れるまでに聞こえてきた咆哮、焦げついた匂い、破壊された柱やひび割れた床などの痕跡から伺えた。確実にトウヤのポケモンたち…そして彼自身もまた、かなり体力を消耗しているだろう。おそらくそれを把握していてあの男はトウヤを潰しにかかってきたのだ。なんて卑怯な。
大事に巻き込まれている幼なじみに対して、チェレンはずっと何も出来ずにいた。ムリするな、そんなことしか言えなかった。だが今なら、今ならようやく彼の力になれるかもしれない。
あとはぼくに任せて、きみは休んでろ。
そう声をかけようと一歩踏み出した瞬間だった。

「トウヤ!!」

今まで黙って立ちつくしていたNが、彼の名前を呼ぶと同時に何かを投げつけてきた。しっかりと“それ”をキャッチしたトウヤの手を反射的に見やると、かいふくのくすりが握られていた。
…これは、どういうことだ。チェレンは戸惑いながらNに視線を移す。Nは、まっすぐトウヤを見ていた。今、Nが何を思っているのかチェレンには推し量れない。しかしトウヤの方は汲み取ったらしく、無言で頷いた彼は急いで自分のポケモンを回復した。ゲーチスが忌々しそうに舌打ちする。

―ああ、きみたちの物語にぼくの手出しは無用だったか。

「大丈夫だな」
隣にいたアデクが呟く。彼もまたどっしりと構えながら、始まったラストバトルを見守る姿勢に入っていた。
「…そうですね」
チェレンはふっと笑って応えた。

トウヤの横顔に、迷いや不安は一切無かった。少し前、この城が現れたとき。ボロボロになったチャンピオンの部屋で、本当はNと戦いたくないんだと言って揺れていたあの瞳に、今は強い光が宿っていた。
この短期間で何があったのだろう。いったい彼はどこまで強くなるのだろう。ぼくはまだまだきみに敵わないのか。
悔しいな。

共に戦うことも出来ずに、結局こうして見てるだけなんて…悔しいけれど、信じているから。
―勝ってよ、トウヤ。




あのときチェレンとアデクさん何もしてくれなかったなーって思って
でも何かしようとして出来なかっただけかも、なんて妄想
例の萌え(燃え)シーン=回復のあれもただの妄想
121009


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