ハジメテの
Nが堪えきれずに泣いた。ポロポロ、涙が彼の頬を伝う。鼻をすすって目元を拭い、Nはまた手を動かし始めた。
「…N、つらいんなら止めてもいいんだよ」
初めて見たNの涙は、予想よりも僕の胸を苦しくさせた。もとより、今NがやっていることはNにとって全くしたことがない行為だ。本人が怖くないと果敢に言ってても、僕はNが傷ついたりしないだろうかとハラハラした。やっぱりやらせなければ良かったかもしれない。これはNがしたいと望むことを阻めなかった僕の責任だ。
「ねえ、あとは僕が全部引き受けるから」
もう止めようと僕が言っても、
「…大丈夫だ。キミに任せて…ボクだけ逃げるワケにはいかない…!」
…君はそうやって立ち向かうんだね。
「…わかったよ」
ならば僕は、Nのサポートに精一杯力を尽くそうか。ああそれにしても、
(…いったい出来上がるのはいつになるかなあ…)
「…トウヤ、やっぱりママも手伝おっか?」
「ううん、もう少しNと二人で頑張るよ。…夕飯、遅くなったらごめんね」
Nが玉ねぎを切り始める前から準備万端のフライパンや合い挽き肉の出番は、まだまだ先になりそうだ。
年上の友達のエプロン姿がかわいいと思うのは間違ってるかな
…っていうトウヤくんの自問が入らなかったのが残念です
一番残念なのは私の頭ですが
111022
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