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IN DREAM

ふと気づくと真っ白な世界にいた。右みても、左見ても、上見ても、下見ても、真っ白。ウェアーアムアイ!?何ここ。どこここ。

ここはどこなのか戸惑っていると、名前を呼ばれた。リョーマだった。とても哀しそうな顔で、いきなり、別れを告げられた。パニックに陥った。リョーマに詰め寄る。どうして、どうしてもう一緒にいられないの。リョーマは、強い意志を宿した――あたしの大好きな――目をしていた。きっと何を言ってもしても決心は変わらないんだろう。
あたしはもうワケがわからなくて、ただただ泣きじゃくっていた。
ふと気付けば目の前にその綺麗な――やっぱりあたしの大好きな――顔があって、こんな状況でも見惚れていると、頬に温かな感触が降ってきた。古風に言うなら、接吻された。そしてリョーマは去っていった。
さっきとは違う意味でパニック状態になった。興奮しすぎて鼻血を出してしまった。

また名前を呼ばれた。手塚部長だった。ビックリしていると、肩に手を置かれて、「エリー…俺がいるから泣くな…」と真顔で言われて、ますますビックリした。言葉の意味を理解した瞬間、あたしは笑った。大声で笑った。あたしが蹲って腹を抱えて笑い続けるのにも関わらず、部長は変わらず真顔で、あたしの頬を両手で包んだ。そして何も言わずに、ゆっくり顔が近付いてきた。パニック100%である。
何も考えずに、ただただ思いっきり、目の前の人物を殴った。

骨と肉の独特の触りを拳にハッキリ感じたところで、目が覚めた。



ここはどこだ。見慣れた場所…部室だ。
そうだ!今日は部活中、急に雨が降り出して、部室に避難することになったんだったっけ。あたしはベンチに座って、何かしてて…多分、うんまぁそれで寝ちゃったっぽいね。あー…何か変な夢を見てた気がするなぁ。んーっと伸びをする。

…あれ?部長が倒れてる。そんで先輩たちが顔を青ざめながら周りを囲んでる。何があったんだ?お、リョーマ。君からあたしの方にやって来るなんて珍しいね。今日は良い日だな!え、何でそんな複雑な顔してるの?分からないことだらけだよ!

「…起きた?」
「さっき」
「…エリー、お前、一体どんな夢みてたの」
「え」
「夢の中ぐらいは大人しくしてて欲しいもんだね」
「どゆ事?」
「アンタ、いきなり泣き出したの」
「マジかよ」
「かと思えば、今度は鼻血出して」
「…えーっと…」
「更には笑いこけて」
「…は、はは」
「部長が起こそうとしたら」
「…ら?」
「あれ」
「…ひょっとしなくても、やったのあたし?」

こくんと頷くリョーマ。
話を聞いて、あたしは全てを思い出してしまった。どうしよう、マネージャーが部長を打ち噛ましちゃうなんてきっといや絶対前代未聞だ。普段好き勝手やってるあたしでもこれはやばい。かなりやばい。…ど、どうしよう…。
あわあわしながら青ざめていると、不二先輩からそっとハンカチが差し出された。

「はいこれ、エリーちゃん」
「…?」
「せっかくの可愛い顔が大変なことになってるよ。ぐちゃぐちゃ」
「マジっすか…ありがとうございます」

つまり拭けってことか。有難くハンカチを頂戴して顔を拭く。顔から離すと…うわ、見事に汚れてる。先輩のなのに!申し訳なく思って先輩を見上げたら「大丈夫」と頭を撫でられた。言いたいことはお見通しのようだ。さすが先輩。ちゃんと丁寧に洗って返そう。
…てか、こんなことしてる場合?部長にあんなことしておいて…あたしはどうすればいいものか。グラウンド100周じゃすまないだろう。もう土下座するしかない…!

「で?」
「へ?」
「あんた、一体どんな夢みたの?」

再度リョーマに質問されたそれに、あたしは乾いた笑いを返すことしか出来なかった。




数年前書いたやつ。ごめん手塚。

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