dream | ナノ


「もうあれ立派な武器だよね」

うつらうつら。頭の方はハッキリと覚醒しているが身体の方はまだまだ眠り足りないようだ。エリーは先程床から移動したベッドの上でゴロゴロしていた。寝返りを打ったり、手足を伸ばしてみたり、意味なく身体を動かしていても、まだまだ起きる気はなかった。
カチャリ、とドアノブを回す音が鳴る。続いてドアが開く音。人の気配。目をつぶっていてもそれが誰だかエリーにはすぐわかった。この部屋の主であるリョーマだ。
そう、エリーが好き勝手にしているが、ここはれっきとしたリョーマの部屋である。

(起きろ、って言われるんだろなー)とぼんやり思いながらまた寝返りを打つと。

「…っ!?」
短パン着用故にむき出しになっていた脚に突如生温かい風を感じた。何事だ、とエリーは思わず目を見開き、上半身だけ起き上がる。そこにはドライヤーを持ってこちらを見下ろしてくるリョーマが突っ立っていた。

「…へ…?リョーマ…?」
リョーマとドライヤーを交互に視線をやる。
紫色のスタイリッシュなドライヤーは、朝のバタバタしているときなどに菜々子や倫子が使っているのはよく見かけるが、自然乾燥派(と言えば聞こえは良いが単に面倒くさがってるだけ)のエリーには縁がなかった。リョーマとてあまり使わないはずだが、何故それをまた部屋までわざわざ持ってきたのだろう。

「あの、越前さん。朝から何をしておいでで?」
「これで起きたでしょ」
「……えええー」

使い方間違ってるとか、もうちょい良い起し方あるじゃんとか、たまにはおはようのちゅーしてみたいなとか、ぶちぶち文句(と一部妄想)を垂れるエリーに、リョーマは一度消したドライヤーの電源をONにした。しかも設定を弱から強にしたらしく、先程より熱く強い風がエリーの顔に吹きつけられた。

「ってまた!?ぬくい!ってか熱い!ちょ、リョーマ、止め、」
エリーはシーツをぎゅっと掴んで耐えながら、行為の中止を必死に求めた。
「ねえ、お前何でベッドに来てるの」
するとリョーマは腕を下ろしてそう問うてきた。人工的な、それも夏には辛い熱風の気持ち悪さから解放されたエリーは、その問いにすぐさま「え?だってこっちの方が寝心地いいし。君の匂いもするし」とけろっと答えた。

「……」
「わー!起きる起きる起きるからそれ近づけんでー!!」

無言、かつ無表情でリョーマは再びドライヤーの照準をエリーに合わせる。まるで銃口を向けられた気分になり、エリーは慌てて両手を上げて観念した。「こええ…」とボリボリ腹をかきながら立ち上がる。

「エリー」
「う?」
「何度俺のベッド入るなって言ったらわかるわけ?」
「…てへ!」
「………」

エリーはわざとらしく舌を出してウインクし、反省する気はさらさらないといった態度をとる。…それからリョーマがどうしたかは言うまでもないだろう。




ドライヤーは 人にあてるための 道具じゃない!

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