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その笑顔が、ニクい

「あ、リョーマアイス食ってるーずるいー」

ノドが渇いたので何か飲もうと1階へ降りてきたエリーは、リビングにてアイスを食べているリョーマを発見した。チョコとバニラのミックスソフトクリームは、5個買うとお得なお値段だったらしく、菜々子が買ってきたものだ。
冷蔵庫にあったサイダーをコップに注ぎ、ごくごく飲みながらエリーはリョーマの隣に座る。

「エリーちゃんはさっき食べたでしょう?」
台所で洗い物をしていた倫子が軽く振り向き、エリーの物欲しげな視線を優しく叱った。
「…食べたのかよ」
さも、そっちだけ食べてずるいといった感じだったくせに。自分も人のことはあまり言えないが、それにしたって食い意地張りすぎだろう、とリョーマは思った。

「でもこうやって目の前で食われたらまた食いたくなるもん」
悪びれることなく、むしろ逆切れ気味なエリーに、倫子はくすくす笑って、「駄目よ」と念押しする。
「むー」
リョーマはその不満げな様子に呆れながらアイスを舐めていた。

「…食べたんでしょ?」
「まあ確かに君が長風呂ってるときに倫子さんたちと美味しく頂いたけどさ…」
「じゃ、いいじゃん」
「あ、そうだ、ごめんね。ホントはリョーマと食べたかったんだけど我慢出来なかった」
「別に俺はお前と食いたくなかったからいいけど」
「えっひどい」

テーブルに頭だけ乗せていたエリーは、だらりとぶらさげていた腕の一つを持ち上げ、リョーマの二の腕をつつく。あえて振り払わずに、リョーマは無視し続けた。ひたすら無言でアイスを舐めて舐めて舐めまくった。それに対抗するかのように、エリーも無言で それ を見続けた。

「…」
「……」
「………」
先に痺れを切らしたのはリョーマの方だった。
「…………そんな見てもあげないから」
だから見るな、と睨む。例え効果がゼロでも、睨みたくなるものなのだ。エリーはというと、首が痛くなったのか身体を起こし、軽く肩を動かした後、目を閉じた。

「見てないもーん」
「…見てたじゃん」
「ちっちっち。あたしが見てたのはー、」

アイスじゃなくて、君!

「……………」

一瞬の思考停止の後、リョーマはとりあえず自分の部屋で食えば良かったかと大いに後悔した。がしかし、リョーマがどこにいようとエリーはそこに駆けつけるのであまり意味はないだろう。ああアイスのせいかコイツのせいか頭が痛くなってきた気がする。きっと、いや絶対、間違いなく後者が理由だ。


その笑顔が、ニクい
(アイスぶつけてやろうかと思ったけど勿体無いからやめた)

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