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eat out

部活が終わり、すっかり日もくれた時間帯に帰ってきた二人は、越前家の門の前で同じ疑問を感じた。何故電気がついてないのだろうか。
エリーが戸を引こうとすると、鍵がかかっていて焦った。

「え、何これどうすんの」
「…スペアのやつ、持ってるから」

そう言ってリョーマはバッグの中からそれを探し出して、鍵を開けた。それからガラガラと音を立てて戸を引き、中へと入っていった。

「ただいま」
「ただいまー」

エリーも続けて入る、家中が真っ暗だった。

「…誰もいないみたいだね」
「だねえ…どうしたんだろ」

仕事で忙しい倫子はいる方が稀だが、たいていは家にいて畳や縁側で寝っ転がって新聞(に挟んでいるえろ本)を見ている南次郎の姿が珍しく、ない。いつもだったらキッチンから菜々子が作る夕飯の匂いが漂ってるのに、それもない。

外と同じ暗闇の中、靴を脱いで二人はリビングへと向かう。
リョーマが電気をつけると、急に明るくなった視界にクラクラしつつ、エリーはテーブルにある手紙を発見した。「お、何だ何だ」リュックは床に置いて、立ったままそれを手に取り読んでみる。
同じくバッグを下ろし、椅子に座ったリョーマは「何て?」と尋ねた。

「みんないないから今夜はどっかで食べてってさ。これで」
手紙の横にあった千円札3枚を指で掴んでヒラヒラさせた。
「ふーん」
リョーマは立ち上がって棚からコップを取りに行った。それから冷蔵庫から麦茶を出して、なみなみと注ぐ。

「おお何かワクワクしてきた!ねねっ、どこで食うどこで食う?あ、出前でも良いなー」

飲みながらテーブルに戻ると、エリーが椅子に座ってお札を眺めながら目をキラキラさせていた。初めてのことに興奮しているようだ。
リョーマは無言で再び椅子に座った。

「…」
「? どうした」
「お前と二人で夜から出かけなくちゃいけないってのがね…」
「嫌とおっしゃりますか」
「うん」
「…よし!」

エリーは立ち上がり、リョーマに背を向けて2、3歩歩いた。かと思えば急に笑顔で振り返る。

「2択だリョーマ」
「は?」

2本指立てた手を突きつけられても、何なんだとしか。いつもながら訳がわからないエリーの言動に顔をしかめた。

「マックと定食屋、どっちが良い?」
「…何でその2つ?」
「昨日から安くなったビックマック食べたい…し、何か無性にみそ汁も飲みたいんだよね」
「それで?」
「それで。君が特にリクエストないならどっちかに行こー」

テーブルに手をのっけるエリーをじっと見上げた。2択の意味は理解したが、まだ腑に落ちない所がある。リョーマは飲み干したコップをそっと置いた。

「っていうか、さっきの、」
「ああ、君の言葉はスルーさせて頂きました」
「…」

にっこりとそう返されれば何も言えない。もう何言ったって無駄だ。そして無駄なことはしないリョーマだった。

「んーやっぱ夕飯だし、定食屋の方がいっかな」
「…俺は茶碗蒸しが食べたい」
「お、いいね。んじゃ決まり!レッツゴー!」

エリーに手を引っ張り上げられ、無理やり立たされた。そのまま引きずられる。

「って、このまま行く訳?」
「着替えんのめんどい」
「…はあ。エリー」
「ん?」
「手、離せ」
「やだ」

そうして二人は制服のまま、腹を満たすべく夜の街を駆けた。

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