dream | ナノ


いただきマウス

「食えば?」

けっこうお腹いっぱいなのと、少しだけ余ってしまったのと、それをエリーがジッと見てきたのとで、差し出した。理由なんてそれだけだ。なのにまた喜びを顔全体に出して「ありがと、リョーマ!」と嬉しそうに皿を引き寄せるエリーを見てると何だか、

「…んあ?な、何?」
貰ったグラタンをスプーンで大きく掬い、口に運ぼうとした所で、視線に気づいた。食べ終わったリョーマが、コップを片手にこちらを見ていたのだ。どぎまぎしたエリーは、思わずスプーンを持った手と開けた口がフリーズしてしまった。

「…別に」
「えええ」
「……何か、」
「う、うん」
「妹がいたらこんな感じかなって思っただけ」
「…何じゃそりゃ」

予想外だった答えにエリーはガクっとした。それから止まっていた手を再び動かせて、グラタンを頬張る。

「あたしが下なん?」
「だってエリーの方が絶対コドモでしょ」

馬鹿にしたような言い方にムっとしたエリーは、「…じゃあ」と空になった皿を両手で持ち上げて隣にいるリョーマに差し出した。

「リョーマお兄ちゃん、今日の皿当番変わって」
「嫌」
「即答!?可愛い妹の頼み聞いてくれたっていいじゃん」
「可愛かったらね」
「ひっでえ…。あ、でもさあ、お兄ちゃん」
「…何?」
「あたしは兄妹より夫婦が良いなあ」

相思相愛な両親を思い浮かべながらエリーがそう言うと、

「…俺は、やっぱどっちも嫌」
「えええええ」

ニヤニヤしながら二人の会話を聞いている南次郎に気付いたリョーマはさっと立ち上がって、自分の皿をキッチンまで持って行き、無言で2階に上がっていった。

「…菜々子さあああん…フラれたあああ…」
にべも無い返事に、エリーはというと、向かい側の席に座ってクスクス笑っている菜々子に泣きついたのだった。

[ ]



×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -