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観念しなさい

それはいつもと同じく、エリーがふと口にしたことから始まった。
部活の休憩時間。エリーは激しい練習を終えたリョーマにドリンクとタオルを手渡した。ゴクゴク美味しそうに飲むリョーマをジッと見つめて、一言。
「ねぇリョーマ、セーラー服はいて欲しいって言ったら怒る?」
「……ブッ」
勢い良く吹き出したリョーマ。まぁ、当然の反応だ。
「…エリー、オレの性別わかる?」
「もちろん。男だしょ。 (その前に、”超可愛い”ってのが付くけどね)」
「…それを踏まえた上で、もう一回さっきのセリフ言ってくれる?」
「えーっと、我が愛しのリョーマ君。セーラー服はいてって言ったら怒りますか?」
ブチ。リョーマの頭の中で、何かがキレた。
「アホか!」
「うお! っちょ、ギブギーブ!」
胸ぐらを掴み、今にも殴りかかってきそうだった。こめかみに青筋を浮かべ、怒っている様子がありありとわかる。
「…っだから、言ったら怒るかって訊いてるじゃん」
「んなの訊かなくてもわかれよ」
「いやー…やっぱダメ?」
「あ・た・り・ま・え・だ!」
「まま、落ち着こーよリョーマ。わかったから!」
「…ホント?」
「うん、どうせダメ元だったし」
エリーから手を離す。コイツの突拍子のないことにいつも乱されてしまう。色んな意味で冷静ではいられなくなってしまう。らしくないと思ってても、やっぱりムカつくのだ。
「はぁ…」
「あ、んじゃこの際、セーラー服は諦めるとして、スカートだけでもはかない?」
手を離したオレが馬鹿だったのかもしれない。のけのけと言うエリーに本気で殺意を感じた。
「…エリー、殺されたい?」
「や〜リョーマに殺されるなら本望だけど、遠慮しとくっ」
ガツン、と近くに置いてあったラケットで頭を叩いた(全力)。一発だけでは足りなかったので、二・三発ぐらい軽く叩いといた。
「いててっ。こら、ラケットは人を傷付ける為にあるもんじゃないよ!」
「人と思ってないから良いでしょ」
「…さらっと傷つくこと言いましたね、越前さん」
「自業自得」
「…やっぱ、スカートもダメか」
「…これ以上バカなこと言うなら、ツイストサーブくらわせるから」
流石に危機を感じたのか、エリーは納得いかない顔をしながら走って行った。良かった、と安堵していたら。
「リョーマー。あたし、絶対諦めないかんね!」
「…え」
背中に悪寒を感じた、理由は。
エリーはとことん自分の欲望に忠実だ。本能のままに生きている。それは、短い付き合いの中でよくわかっていたこと。エリーが『諦めない』そう言ったからには、誰にも止められない。つまり、さっきの言った事は。
「…早退しようかな…」
やけに青い空が、目に染みた。

「ブチョー!不二せんぱーい!」
エリーが向かった先は、青学NO.1とNO.2と呼ばれてる二人の所。何をする気だ…?
「一ノ瀬」
「エリーちゃん。どうしたの?」
「ちょっと提案というかお願いがあるんですけど、聞いてくれますか?」
「何だ?」
「ちょっと屈んで下さい」
そうしてヒソヒソと話し始めた三人。リョーマの所までは何を話しているのか、わからないだけ怖い。でも、不二はともかく手塚はそう簡単にエリーのお願いを聞いてくれないだろう。(部長…お願いしますよ…っ!)リョーマの運命は手塚に任せられた。…が、その祈りは儚くやぶれてしまった。

「レギュラー集合!」
そうしているうちに休憩時間が過ぎていった。手塚の呼びかけに、ぞろぞろとレギュラー達が集まってくる。
「今日はミニゲームを行う」
次に手塚が発した言葉に、誰もが耳を疑った。そして頭を疑った。しかし手塚は至っていつも通りの顔だった。
「負けた奴は…スカートをはいてもらう」
「「「「「「「…えぇええ!!!?」」」」」」」」
思わず全員で叫ぶ。その時、姿が見当たらなかった不二とエリーの二人が帰ってきた。…その手にはスカートが数着、と。
「は〜い、皆さん。コレはいてもらうからねー」
「ちなみに、抵抗した方はもれなく僕等が作ったコレを飲んでもらうから」
人が飲むものとは到底思えない色をした液体が入ったグラスを数個。「大丈夫、数分で作ったものだけど、一応死にはしないから」その笑顔に顔を青ざめなかった者はいないだろう。
「あ、で、でも皆で九人だから一人余らないか、手塚?」
「…越前」
「…はい」
「お前は、一ノ瀬とやってもらう」
「…はい?」
「それで人数がちょうど合う。では、やるぞ!!」
「え、は、ちょ、部長!」
「何だ」
「何でエリーの要求なんか聞いたんスか!!」
「…すまない」
「……」
とても申し訳なさそうに目を伏せながら、今までになく弱弱しい声で謝られた。何がそこまで手塚を追い詰めたんだろうか。リョーマはきっ、とエリーを睨んだ。本人は「覚悟しててねって言ったでしょ?」と、ニヤリと笑っていた。
絶対勝ってやる…!!!そう決心しながらミニゲームは始まった。

結果。

「うそぉ………」
「(ゼェゼェ)…おっしゃー! スカート拝めるぞおおお!!!」
無我の境地になってまで戦ったリョーマだったが、結局はエリーの勝ちで。ココでリョーマに究極の選択がきた。
「さぁ〜リョーマ、スカート!」
「越前くん、スカートはかないんだったら、この特製エリーちゃん&不二汁を口移しで飲ませるよ?
「……ッッ!!!!」
嫌だ嫌だどっちも嫌だ…!エリーの思惑通りになるのもやるせないし、あの変な汁を飲んだら絶対死ぬ!!大体口移しとか話が違うじゃんかぁ…。プライドを捨てるか、自分の身を捨てるか。…泣く泣く前者を選んだリョーマ君なのでした。

ミニゲームで負けたレギュラーは、各自ミニスカに着替えた。(一部あのエリー&不二汁を飲んで倒れた者もいて、未だ目を覚まさない。)あははと苦笑いするしかない。
さて、エリーお期待のリョーマはというと。部室から出てきた瞬間、周りは釘付けになった。
ぐはぁっ!!
「もーやだ…」
「「「(か、可愛い…!!!)」」」
女テニのミニスカートは、リョーマのキレイな足を満遍なく晒していた。いつもの生意気な瞳は少し涙目になっていて、悔しそうに歯を食いしばりながらも顔は真っ赤。男だという性別を忘れさせるその愛らしさに皆、俗に言うメロメロ状態だった。
エリーはもちろん鼻血を吹き、不二は「うん、やっぱり似合う」と微笑みながら写真をこっそり撮っていた。
「リョーマ!何と言うか…もう最高!
「うるさい」
「もーちょーやばいね!可愛すぎて鼻血止まんないよあたし…!」
「…」
「あれだよね、あれ。生足万歳…っ!」(拳グッ
「…エリー」
「ん、なに?」
「3秒以内に遺言残せ」
「えっ!ええええと、リョーマの生足拝めたんで、我が人生悔いなし…っ!
「よし。じゃあ、死んでこい」
「え、わ、スススストップ!あと一つ!」
「…?」
触らして下さ…っ
ドカッ!
ハァハァしながらの最後のお願いは叶うことなく、エリーはリョーマの見事な蹴りにより、お星様になったのでした。

このままでは部活続行不可能と、ちゃっかりリョーマにやられちゃってる手塚は判断し、急遽部活を終了させた。そんなある日の青学男子テニス部。
「いつか絶対こんなトコ転校してやる…!!」
…この写真、ばら撒かれても良いんだったら構わないよ、越前くん?」(ニッコリ
「!?」
「…リョーマ。悪いこと言わないから、逆らうな」
「そんなぁあああああ〜〜〜〜〜!」
…ご愁傷様です…。


〜おまけ〜
「そいや不二先輩。あたしが蹴られた時、リョーマのスカートの中見えませんでした?」
「バッチリね」
「うっしゃ! 写真プリーズ不二先輩……!!」
「はい、どうぞ」
写真はエリーの特製アルバムに収録され、家宝になったそうな。



スカート姿が見たかっただけ。

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