dream | ナノ


お泊まりなう

「ただいまっス〜」
「おかえりエリーちゃん。あ、越前くん寝ちゃったみたいだよ」
「…!!!」
「え、マジ?」
「うん。英二、毛布」
「オッケィ」

トイレから戻ると、リョーマが寝ていた。本棚にもたれかかって、すやすやと寝ている。菊丸先輩が二段ベッドに敷いてあったタオルケットを取り出して、不二先輩がリモコンでテレビの音を小さくしてる間。あたしは、その可愛い寝顔を見ながらガッツポーズをしていた。よっしキタキタキタキタアアアアア!!!


現在PM23時ちょっとすぎ。場所は菊丸先輩の家。
今日の部活は午前で終わり、明日の部活は午後から始まるってことで皆で遊ぶことになった。提案はあたし。まあ色んなとこに行って、最終的に珍しく誰もいないらしい菊丸先輩の家でゲームすることになり、さらにお泊りまですることになった。ここで大幅に人数は減って、残った(=泊まることになった)のはあたしとリョーマと不二先輩。いつもよくいるメンバーになった。他の先輩たちとももっと遊びたかったなー。ま、リョーマがいれば良いけども。
リョーマはお泊りについて最後まで渋った。まあ遊びに行く時点で渋々だったか。

「はあ?泊まるなんて聞いてないんだけど」
「そりゃ、今決まったし」
「…エリーだけ泊まれば?俺帰るから」
「え、もう倫子さんに泊まるって連絡しちゃったべ」
「…いつの間に…」
「君がトイレに行ってる間に!」
「…」

意地でも帰ろうとするリョーマを、先輩たちの力で何とか引き止めることに成功した。あたしだけじゃきっと説得出来なかったろうから、やっぱ先輩たちはすごい。
それで、渋々な態度をまるで隠そうとしなかったリョーマも、徐々に楽しんできたみたいだった。
ゲームの腕が意外に強い不二先輩相手に必死に戦ってたり。先輩のマリカーテクニックは半端なかったな。いつも最下位争いしてるあたしはちょっと羨ましかった。

「あっリョーマ右右!そこ最短ルートだから…ってあああアイテムもったいねー!もう少しなのに…!」
「エリー」
「う?」
「ちょっと黙れ」
「っすみませんでした!」

横で応援してたら、リョーマは画面から目を離さずに重低音でそう言った。こえええ。結局先輩には一度も勝てなくて悔しそうだったけど。

夕飯時には、菊丸先輩がわざわざ作ってくれた特製オムライスに「うまい、っス」と小さく呟いてたりしてた。料理が出来ないあたしは先輩に嫉妬せざるを得なかったむむむ。でもオムライスはちょう美味しかったから余計にむむむむむ。

「菊先輩!今度料理教えてください!」
「へっ?ど、どしたの急に」
「菊先輩、止めといた方が良いっすよ。破滅的っすから、こいつの腕」
「そ、そこまで酷くは…」
「あるでしょ。この前うちの台所爆発させるとこだったの誰?」
「う…ううう…」
「エリーちゃん、大丈夫。頑張ってればいつか上手くなるよ。僕も手伝うから…ねえ、英二」
「え、あ、うん!俺も教えてあげるからさ!だから凹まないで…ね?」
「菊先輩…不二先輩……ありがとうございます…!」
「ま、無理でしょ」
「…無理言うなー!」

先輩たちの優しさに感動してたら…ちくしょう、いつか絶対リョーマを唸らせて見せるぞ…!

あと一緒に風呂に入ろうとしたら、リョーマは思いっきり音を立ててドアを閉めよった。おーいここ他人家他人家。まあここら辺はいつも通りなんだけど、風呂から出てきたリョーマにはぐはあってきた。袖余っててだぼだぼ…!可愛いいいいいいいいいい!家に帰らずここに来てるので、着替えは菊丸先輩から借りることになっていた。最初はお泊りの醍醐味だよね、としか思ってなかったけどこれは良いな。また先輩に嫉妬。

「っリョーマかわいい!ちょうかわいい!!!」
「…」
とりあえず勢いよく抱きついたら(シャンプーの匂いがした)、見事に殴られた。うん、やっぱいつも通りだ。


そんなこんなで今に至る。
何であたしが先に眠ってしまったリョーマにガッツポーズしたかと言うと、答えは簡単!一緒に寝たかったからだ。意識があったら絶対拒否られてただろーから、早く眠れ早く眠れと念じてた甲斐があったぜ…!

「ん〜…音消したら迫力ないし、越前くんも寝たし」
「俺たちも眠っちゃおっか?エリーちゃんはどう?」
「あたしはどっちでもいっすよー」
「んじゃ寝るかー」

菊丸先輩がゲームの後片付けを始めた。あたしはもうワクワクが止まらない。今から眠るというのに。

「やっぱ、エリーちゃんとおチビがベッドで寝るってことで良いかにゃ、不二」
「僕はそれで構わないよ」
「!? ちょちょちょっと待って下さい先輩!そんな気ぃ使わなくたっていいですから!」

小声で叫んだ。勝手に先輩たちで話が進められて焦る。

「いーっていーって。エリーちゃんこそ、遠慮しなくていいよ」
「いや遠慮とかじゃなくて、あたしあれがしたいんですよ!」
「「あれ?」」
「あれ…何でしたっけあれ…ああそうだ雑魚寝です雑魚寝」
「雑魚寝?どうして?」

3人で輪になりながら顔を近づけて話している。小声だから聞きとりやすいようにだ。おかげで先輩二人に間近で見つめられている状況。別にドキドキはしないけど、何だかファンクラブの人たちにこんなこと知られたらまた呼び出しくらいそうだなあとどうでもいいことを頭の片隅で考えてしまった。

「リョーマの隣で寝たいんです」
「? それってベッドじゃ駄目なの?」
「明日目覚めたときとか、床の方がまだ怒られないかなあって」
「あー、なるほど…かにゃ?」
「ふふ、それじゃあエリーちゃんのご希望通り、雑魚寝しよっか」

そうして、床に何も敷かずに、タオルケットだけ被って寝ることになった(枕は配られた)。本棚にもたれっきりだったリョーマを横にさせて、あたしはその隣に寝転んだ。予定通りにいって満足満足。

「んじゃおやすみー」
「おやすみ」
「おやすみなさーい」

先輩が部屋の電気を消して、暗くなった。あたし達はドアの方にいて、先輩たちはちょっと離れた窓側にいる。その窓のカーテンの間から少しだけ外の明かりがもれていた。

あたしのワクワクは最高潮だった。人の家に泊まるのが初めてなのもある。夜だからってのもある。やっぱ一番はリョーマが隣にいるからだろう。一つのタオルケット(あたしの分は良いと断わった)の中に、肩が触れるくらい近くに好きな子がいる。ワクワクするってもんだ。あ、この場合はワクワクよりドキドキかなあ。わからん。ただもう眠れなかった。

昔から雑魚寝が好きだった。と言っても父さん母さんとしかしたことないけど。川の字で家族3人寝て、結局いつも真ん中の人(順番はローテーションだった)の布団に集まって雑魚寝状態になっていて。本当にいつもそんなんだったから、越前家に来た当初、ベッドだわ一人だわでなかなか寝つけなかったのはちょっとした秘密だ。

まあ今も眠れないでいるけど。興奮してるからしゃーない!うん!いつかこうしてリョーマと寝たいなって思ってたから嬉しい。隣に大好きな人の体温を感じながら寝るのはいいもんだ。似たようなことさっきも思った気がするけど気にしない。
顔だけ動かして、暗さに慣れてきた目でぐっすり寝静まってるリョーマの顔をじっくり見た。こっそり腕を伸ばして頭を撫でてみたり頬をぷにぷにしてみたり。今日は普段とちょっとだけ違うリョーマの表情や態度が見れたし、こうして一緒に寝れること出来たし、幸せだー。


翌日、4人とも起きたのがまさかの正午で、慌てて家に帰って支度して急いで学校行くも、部活に遅刻。走らされるハメになりましたとさ。

「何で誰も起きなかったんスか…」
「んー、計12時間近く寝てた君も君だろーと思うよ」
「俺は不二が起こしてくれると思ってたんだけどにゃー」
「うん、僕もびっくりした」
「そんな他人事みたいに…はあ」
「まーまー、ちゃっちゃと走って終わらせましょー!」
「…何かお前、ご機嫌だね」
「そう?っへへへ」
「うん、ムカつく」
「って何故に?」
「何となく」
「えええ理不尽です隊長!どゆこと「じゃ、俺先行くから」…あっこら待てーい!」

リョーマを追っかける最中、後ろから先輩たちの笑い声が重なるのを聞こえたような気がした。




とても都合がいい、そして趣味に走った話でした。ええもう色々と。
最初不二先輩の家にするつもりだったんですが、先輩の家調べたら騒げる場所じゃないよなーと思いまして菊の家です。え?お前絶対そこに邪な思いがあるだろうって?いやいやまさかそんなうわなにするんだやめry


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