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リアリーストリング

「あああああ…どうしようどうしようどうしよう」

バタバタバタバタ。エリーは「あ」と「どうしよう」を繰り返しながら階段を登っていった。そうして行くのは自分の部屋でなく、隣のリョーマの部屋だった。困ったときも、何でもないときも、意識的でも無意識でもとにかくエリーはリョーマの部屋へよく足を運んだ。今もそうだった。焦って焦って走って、半開きのドアを足で蹴っ飛ばして叫んだ。

「リョーマ!!どうしようこれ!!!」
「…」

そんなエリーに最近怒る気も失せてきたリョーマは、無視して雑誌を読み続けた。
「え、ちょ、聞いてよー!」床に座ってベッドにもたれ掛かってるリョーマにずずっと近付き、「これ見ろってこれ!」エリーはそれをリョーマの目の前に垂らした。
眼前にあっては無視しようにも出来ないので、「うるさい…何」リョーマは雑誌から目を離し、エリーが持っているそれを見上げた。

「…何、コレ」
「ヒモ」

その白くもないけど黒くもない、灰色がかってるヒモが一体何の意味を表しているのかわからず、リョーマは訊ねる。

「何の」
「…リビングの、電気の…」
「…取れたワケ?」
「うん…」

エリーはしゅんとしたままリョーマの隣へ座り、事の経緯を語った。と言っても実に単純なことだ。

今現在8時すぎ。エリーが1階を降りるとまだ誰も帰ってないらしく、真っ暗だった。電気をつけようと、手探りでヒモを探し、手にそれが当たった瞬間ぐいっと引っ張ったそうな。そうして電気はついたのは良いが、エリーの手元にはヒモが残っていた。慌てて元に戻そうとするも、リビングの電気はプラスチックで覆われていて、そこに小さな穴が開いておりそこからヒモは出ていた。つまり直そうとするにはプラスチックを開けなければならない。開け方も知らなければ、元来器用でもないエリーはもう立ち尽くすしかなかった。

「で、君のとこに来たんだ」
「…」
「マジでどうしようこれ」
「別に、親父あたりが帰ってきたら直させれば良いじゃん」
「だって、怒られん?」
「ていうか、アンタまたどんだけ馬鹿力で引っ張ったの」
「ふ、普通だよ!ちょーっと引っ張っただけだもん!あたし悪くなーい!」
「はあ…」

手先でヒモを弄りながらそう主張するエリーは無視して、お腹減ったから母さん早く帰ってこないかな、と思うリョーマだった。



越前家のリビングの電気が私の家のと構造一緒かどうか、とか越前家大人組は家を空けすぎ、とか良い子は突っ込まないように!

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