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ああかるい

「あれ?いない…」

朝。いつものように起きてすぐに隣の部屋へ行ったらベッドはもぬけのからだった。トイレにでも行ったか?と思い、「ふわ〜あ」まだ少し眠たい身体を引きずりながら、エリーは部屋を出て階段をゆっくり降りていった。
今日の朝飯は何かな〜と腹をさすりながら、トイレに行って用をたし、洗面所へ行って顔を洗った。それからリビングへ行くと、食卓にはやはりまだ眠たそうな顔をした少年がいた。

「あ、いた。おはよ、リョーマ」
「…はよ」
「あたしより早いなんて珍しいな」

夏休みに入って二週間が経つ。今日は久しぶりに部活がない日だった。思いっきり眠ろうとしたのに、こういう時に限って早く起きてしまうものである。今現在7時ちょっと過ぎ。エリーはイスに座ってもう一度「珍しいなあ」と呟いた。

「…なんか、起きた」
「あー。あたしもあたしもー。何かおきた。リョーマもとはなあ…雨降るなこりゃ」
「降ってるよ」
「え、マジで」
「うん」
「ほえー…気付かんかった」

冗談で言ったのにまさか本当に降ってるとは。「せっかくの休日なのに…」少し、しょんぼりした気分になった。

テーブルの上には袋に入った市販の細長いパンと、卵焼きとウインナーのお皿(端にはスプーンとお箸)、レタスが入っているボウルと、ケチャップやマヨネーズ。どうやら今日の朝ごはんはこれらしい。エリーはパンを開けて、中にあるバターをスプーンでとり、レタスを挟んだ。

「ねーねー」
「ん?」
「倫子さんは?」
「仕事」
「あーそっか。菜々子さんは?」
「寝てるんじゃない」
「んじゃ南次郎さんは?」
「知らん」

最後の答えにぷっと吹きつつ、パンにどんどん挟んでいった。ケチャップをどばどばかけたら、サンドイッチの出来上がり。隣で無表情でむしゃむしゃ食べてるリョーマと同じように、エリーもそれを口にした。「いただきまーす」
先程は気付かなかったが、二人が口を閉ざすと静かな空間が訪れ、雨音も微かに聞こえてきた。テレビはつけていない。他の人の気配も感じられない。何だか世界に二人だけみたいだなあと寝ぼけた頭でエリーはぼんやり考えた。

「ねーねー」
「今度はなに?」
「今日の予定はー?」
「…別に、ない」

と言って牛乳を飲むリョーマは、寝起きなのもあるだろうが不機嫌そうだ。
今日も普通にテニスをするつもりだったのに、雨が降っているので渋々諦めたといったところだろうか。今日の部活休みは体調を整える目的もあるので、そんな日に身体をこわしたら意味がない。今日は大人しく家でのんびりしておこう。――と考えが至るも、しかしやっぱり、「(テニス、したかったんだろーなー)…残念だね」返事はなかった。

代わりにリョーマは、テーブルの右端にあるティッシュを引き寄せて、エリーの前にどん、と置いた。

「へ?」
「…ここ、」
「?…あ、」

リョーマが口の下辺りを指さしたので、自分のそこに指を当ててみる。指にはケチャップが付着していた。いつの間にか口元が汚れていたらしい。

「ありがとー」
「ん。…ごちそうさま」

エリーがティッシュで拭ってる間に、リョーマは空になった皿を流し台までもって行き、そのまま自分の部屋へ直行した。「あ、ちょ、待ってよリョーマー」エリーも慌てて残りを一気に飲み込んで、その後を追う。

「…なに」
「あー…と、その、今日どうするのかなーって」
「だから、決まってないってば」

二人は階段を登り、リョーマの部屋へと入っていった。何故入る、という部屋の主の咎める視線は気にせずにエリーは床へ座った。リョーマはベッドへ腰かけた。

「この前買ったゲームでもする?」
「それもいいけど、」
「う?」
「アンタ、宿題は?」
「…全然してない」
「…だと思った。今やれば?」
「えーじゃあ一緒やろーよー」
「やだ」
「何で」
「エリーと一緒だと絶対はかどらないから」
「…えへ。まあ良いじゃん!」
「良くない。てか俺もうほとんど終わったし」
「えええっ!」

聞きたくない言葉ランキング1位の実力をもつ『宿題』の話題になって、エリーはこてんと横に寝転がったが、リョーマからまさかの台詞が出て、思わず飛び起きてしまった。

「ウソだろ?」
「ホント。あとは読書感動文と自由研究だけ」
「あー君国語と理科苦手だもんね、…じゃなくて!プリントとかマジで終わったん!?」
「だから、そう言ってるじゃん」
「…」

驚きを顔一杯で表現してるエリーをよそに、リョーマは立ち上がってテレビの前でごそごそし出した。

「…ん?何してるん」
「ゲームする準備」
「え!ズルイ!あたしもやりた、」
「宿題」
「う…」
「やれ」
「ううううう…だって…ゲーム…」
「…はあ」

徐々に声が小さくなっていくエリー。リョーマはソフトをセットしてから振り返り、ある提案を出した。

「宿題半分以上終わったらやってもいいよ」
「え」
「ゲーム、したいんでしょ?」
「う、ん。まあ」
「じゃあ、さっさとしてこい」
「…ここでやったら駄目ですか隊長」
「駄目」
「うえ…」

ゲームもしたいが、エリーは単にリョーマと一緒にいたいだけだった。このままだと、宿題を盾に色々言われるかもしれない。(宿題するまで部屋入るの禁止、とか…やばいどうしよう!)それはとてもとても困るので、ならばやはりさっさと宿題すべきか。

「…うし!今日で全部終わらす!」
「…は?」
「あたしはやる!やったるからな…覚悟しとけよリョーマ!」

何を言ってるんだ、と聞こうとしたときにはすでにエリーは部屋をばたばたと出て行っていた。
しばらく呆然としていたが、まあ出来る訳ないだろう……と高をくくって、リョーマは再びコントローラーを握りゲームを再開した。
一方、エリーは机の上にプリント類などを広げ、はりきっていた。「絶対やるぞー!おー!」

さて無事にエリーが宿題を終われたかは…神のみぞ知る。




タイトルは明るい、とあ、軽いをかけてます。
この小説を表してるかのように思えて、実は私の脳内を表してるのです!え、どうでもいい?


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