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XとY

担任が自分を呼ぶ声が聞こえた。聞こえてはいたが応えることは出来なかった。今は目の前のそれに集中しないといけなかったから。

「…だーっ!」
バンっと音を立ててエリーは机にうつ伏せた。それからすぐに身体を起こしては、「意味わかんねえ!」と言い、顔だけ机に置いて両腕をだらんと垂れさせた。
ただ今エリーが格闘しているのは数学の宿題プリントだった。やってないことに気付いたのはつい先程。ホームルーム中ずっと解き続けていた。問題数はそこまで多くないのだが、問題の難しさがエリーを悩ませていた。

「エリー」
「んあ?」
「あと7分」
「うわっ言わないでそれ…!」

時計を見て残り時間をエリーに宣告したリョーマは、次の授業で使う教科書を無造作に机の中から取り出していた。ちなみに一時間目から数学なので、エリーはこんなにも急いでいるのだった。

「だいたいリョーマはいつの間にやってたのさ!」
「昨日の夜」
「マジで!珍しく勉強してるなーって思ったら…」

昨夜、エリーはいつもの様にリョーマの部屋でのんびり漫画を読んでいた。部屋に来たときから机と向かっているリョーマの背中に「ねー何してんのー」と声を投げても「……」無言だった。リョーマの場合、集中していたというよりもわざと無視したのだろう。

「何で言ってくれなかったのさあの時!」
「土日ゴロゴロしてたお前が悪いじゃん」
「う…っ」

別にリョーマに責任転嫁をしたかった訳ではないのだが、正論を返されて言葉が詰まった。

「べ、別にゴロゴロはしてない…ゴロゴロは!部活やってたし!」
「先生には通じないけどね、そんなの」
「ううううう…」

そう、どんなに部活を頑張っていたとしても、それを勉強しない理由にはならないのだ。

「もーやだ…エックスとワイが頭の中で踊ってる…」
「口より手動かせば?」
「あと何分?」
「2」
「いーやー…!」

エリーは無駄口を止めて、猛スピードで手と脳を動かせた。結果、チャイムが鳴ると同時に終わった。心からの安堵の溜め息がエリーの口から出たのだが。

「…自習?」
「自習」
「何でっ!?」
「先生いないから」
「き、聞いてな」
「朝で言ってたけど。聞いてなかったのエリーだけ」
「…ぬあーーー!」

へなへなと身体の力が抜けていくのを感じた。頑張ったことは決して無駄ではないはずだ。無駄ではないけども、…凹んだ。再び机にうつ伏せながら、エリーは弱弱しい声で隣人に問いた。

「…リョーマ」
「なに」
「もっかい聞くけどどーして教えてくれなかったんですか…」
「俺に言う義務ないし」
「…鬼ー!!」

もう数字見たくない、と課題プリントをやらずに寝たエリーが起きたのは授業終了5分前。課題を提出したことが出席扱いになるのだと、黒板にデカデカと書かれていたのを見たのがその3秒後。

「…越前さん」
「先に言っとくけど、写させないから」
「…のおおおおーーーーー!」

数学が、憎いです。byエリー
自業自得。byリョーマ

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