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one day

「リョーマー!」
「!」

だだだだっと走ってきて、ばっと自分に向かって飛び掛ってくるエリーを軽く、そして綺麗に身をかわした。「おわっ」目的を失った身体はそのまま宙に舞い、地面がウェルカム状態。だがそこで倒れるエリーではなく、地面に手をつけひらりと一回転。無事着地した際に周りから拍手がちらほら起こった。互いに見事だった。

「…」
「…隊長、だんだんかわすの上手くなっていってませんか!」

何でも無かったかのように再度こちらへ寄ってきて何故か敬礼をとるエリーに、リョーマは悪びれることなくそれ所か堂々とした様子でこう言った。

「誰かさんのおかげでね」
「っはは!んまぁそれは措いとくとしてー」
エリーはその発言を追及せず笑い、話を進めようとした。

「何か用?」
フェンスに持たれかかって、いつもの無愛想な顔でエリーを見遣る。

「うん!あのね、さっき不二先輩に聞いたんだけど、願掛けって知ってる?」
「願掛け?」
「そ!」

こちらもまたいつもの面白い事を見つけた時のキラキラした瞳をして、両手をばちんと叩いた。

全国大会を優勝する為に願掛けをしている、と言う部員の話を聞いて「願掛けって何ですか?」とエリーは興味津々に不二に訊ねてみた。エリーの頭を撫でながら、不二は優しく丁寧に教えてくれた。

「…で、一番好きなモノを断って、願い事が叶うよう祈ることだって」
「へぇ」
「あたしもやろうと思って、諦めたんだ」
「は?」

絶対やるなこれはと思って聞いていただけに、エリーが言った事に驚いた。思わず身を乗り出す。やめた、ではなく、諦めた。珍しい。非常に珍しい。何故なのか疑問を抱く。答えは至って簡単だった。エリーは組んでいた腕を外し、拳を握った。

「だって、リョーマを断つとか、あたしぜってぇー無理!」

………。数秒、間が、空いた。リョーマは深く息を吐き出し、顔を下に向けた。「ちょ、何故に溜め息!?」エリーはその反応が不服だったみたいだ。

「寧ろばんばん断って欲しいんだけど」
「ぇええ、冷てぇー!」

ひ〜ど〜い〜わ〜と叫びながらどこかへ駆けていくエリーの後ろ姿を見て、もう戻ってくるなとリョーマは思った。どうせまた結局、何度でも、あいつは俺のとこに来るんだろうけど。
そうならないよう願掛けでもしようかな、という考えが頭を掠めた。




受験合格に向けて私も越前断ちすべきかとふと思ったんですが、0,1秒後に「あ、やっぱ嫌ていうか無理無理」と悟って首を振りました。

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