CATS
お昼休み。裏庭で弁当を食べていた途中で、リョーマがいきなり立ちだした。
「? どこ行くのー」
「トイレ」
「あ、行ってら」
箸を咥えて手を振って見送ったのが、かれこれ15分も前の事。…ちょっと遅くね?木に凭れながら、携帯の画面をじっと見つめる。ご飯はすでにキレイにたいらげていたので、ヒマだ。
リョーマが隣にいないとつまらない。そして時が経つのがやけに遅く感じる。うーあー。意味なく身体を伸ばしてみたり。意味なく足をばたばたさせたり。意味なく歌を歌ってみたり。
されど、リョーマは帰ってこない。何でだ。はっ、ひょっとして何か事件に巻き込まれてる!?やばい。もしそうならここでこんな無意味な事してる場合じゃねぇ!急いで立ち上がって、スカートを軽く叩いて、近くのトイレへと走り出した。
ちょうど中から出てきた男子に確認をとってもらった。いないらしい。大してるかも、という予想は違ったみたいだ。じゃあ何処?男子にお礼を告げて、元来た道を考えながら歩く。
さっきの場所に荷物はそのままだ。携帯に出ない=まだ戻ってないんだよね。心配だ心配だ心配だ。
…ふと、猫の鳴き声が聞こえた。か細い声。さっきは急いでたから気づかなかったのかも。ピン!ときた。多分、いや絶対そうだ。耳を傾けて、声のする方へと向かう。茂みをかき分けて…あ、いた。リョーマ、発見!野良猫と実に楽しそうに戯れていた。とりあえずあたしの心配は杞憂だったようで、ほっとした。
にしても。ばれないように身を隠して、その様子を見つめる。愛おしそうに、ひざに乗せたにゃんこを撫でるリョーマ。その手に気持ちよさそうに甘えるにゃんこ。可愛い。すっごく可愛い。悶絶もんだ。何あの猫二匹。
だけど、だけどさ。あたしには到底見せてくれないだろう柔らかい笑みも、優しい眼差しも、全部あのにゃんこが受けてると思うと…何だか泣けてくる。カルピンも常々羨ましいと思っていたけど…うぅ、猫にまで嫉妬する自分を浅ましく思うぜ…。
しかし数十分近く、ここでああしていたのか、あの子。あぁくそ、可愛いなーこんちくしょう!ムカつく!でもやっぱりかわええ!
うずうずする身体は止められなかったので。もしこの恋が叶わなかったら(叶えてみせるけど!)来世は猫になろう、とか決心しながら、あたしはリョーマとにゃんこが作るほんわかムードの中へ飛び込んでいった。