dream | ナノ


We feel very hooooot!

音、が、…聞こえる。

「…リョーマ」


We feel very hooooot!


「…何」
「ピンポン鳴ってる」
「鳴ってるね」

何もやる気がなく、特にやることもないのでごろごろと床に寝転がってたら、一階からインターホンの音。顔を動かさずに、この部屋の主を呼びかける。誰かお客さんかなぁ。でも倫子さん達(少し前に買い物に出かけた)は、誰か来るとは言ってなかったし、…セールスか?

「…出ないの」
「メンドイ」
「おいおい」

リョーマはベッドに座って壁にもたれて、さっきからマンガを読んでいた。こちらを見ずに言い放った言葉に、良いのかよ、と突っ込んだ。

「じゃ、エリーが出れば?」
「…メンドイ」
「…」
「…」

放置プレイすることにした。ゴメンなさい、誰か知らない人。


それにしても、あっつい。
今のあたしは赤いタンクトップと黒い短パンという、ファッションセンスのカケラもない格好である。まあファッションセンスなんてものは元から持ってないかもだけど。
それはさておき、好きな子が傍にいる分には、ヤバイ格好。寧ろ格好より、様がヤバイ。
だらしなくぐてーっとなって、汗かきまくって、更にはタンクトップを引っ張ってばたつかせたりしてる。それで服の中に息吹いちゃったりしてる(微妙に涼しい。ホント微妙だが何故かしてしまう仕草)。それでそれで裾とかで汗拭いちゃったりもしてる。
もうこの暑さ凌ぐためならあたしはいくらでも女を捨てる!捨ててやる!

「一応女なんだから、やめろよ…」
あたしから目を逸らしながらそう言ったリョーマにこう返したら、呆れた目で見られた。自分でもそれどーよと思う、ていうかこんなんだからリョーマはあたしを意識してくれないんだろうけど、この際気にしてられないのだ。

だって暑いんだもん。暑くて暑くて暑くて、今はもう『暑い』って事と、リョーマの事しか考えられない!あ、後者はいつものことか。
うん、とにかく暑い。扇風機をつけて、うちわも使ってるというのに、まだ暑い。今日だけで100回以上は呟いただろう。あーつーいー。

「溶けるー…死ぬー…」
「さっきから煩いんだけど」
「んなー…君は暑くないのかい」
「暑いって言ったって涼しくなるわけじゃないでしょ」
「そりゃそうだけど……あぁもう何でクーラー壊れたんだー!」
「俺に聞くな」
「しくしく」

つい先日、リョーマの部屋のクーラーがぶっ壊れた。理由はよくわからない。ただ、直るのに一週間ぐらいかかるらしい。
あたしは普段からこの部屋に頻繁に入ってた。自分の部屋帰れよ、なんて言いつつ、リョーマは最終的に諦めて居させてくれた。夏になってからは更に入り浸っていた。リョーマと一緒にいたいってのもあるけど、単純にあたしの部屋にクーラーはなかったからでもある。涙目&土下座で頼み込んで、夜、寝させてもらったりもした。床に持ってきた布団をうきうきと敷いてたのはついこの前なのに。今はクーラーないからそっちと一緒でしょ、と昨夜は追い出された。
この世の楽園というべき場所だったのに…ああ。まぁ直ったらまた元通りの生活なんだけど。それでも重要なのは今。クソ暑い(お下品な言葉だが心の中だから良いよね)今。だれかどうにかしてくれ。

あぁ暑い。何もしたくない。でもそれはそれでヒマなのである。リョーマの視線は変わらず漫画。…むぅ。

「なぁ越前さん」
「今度は何」

仰向けの体勢からうつ伏せにして。うちわパタパタ、足バタバタさせながら、また話しかける。

「アイス食べたくない?」
「食べたい」
「ミートゥ」
「で」
「買ってきて」

お願い、と語尾にはぁとをつけて可愛く言ってみた。ウインクもしてみた。それがリョーマには不快だったらしく、ようやく顔を上げたかと思うと、ギロリと睨まれた。えらくぎすぎすした声で、返ってきた言葉は。

「ヤダ」

そうしてまた、マンガに目を戻した。うーん。予想通りの反応だ。悲しい!一応理由を聞いてみる。

「何故に」
「暑いメンドイ動きたくない」

わぁノンブレスだーすっごーい。しかし言ってる事はあれなので、上半身だけ起き上がって一喝する。本気じゃないけど。

「おま、若いもんがそんなこと言ったら駄目だろ!」
「だから、お前が行けって」
「…あたし、実は太陽恐怖症なんだ…」
「へぇ。今までそんな素振りぜんっぜん見せなかったくせに?」

突っ込まれてしまった。ずるずると身体を引きずってベッドに近付く。そうしてベッドに顔だけ乗せて、上目遣いでリョーマを見た。

「…あと、アイス食べないと死んじゃう病にかかってるんです」
「深刻だね」
「深刻だよ。だから買ってきておくれ」
「ヤダ」

なおも変わらない答え。
最初は冗談だったけど、言ってるうちに本当にアイスが食べたくなってきたから困る。でも動くのはやっぱり面倒だ。だって外は中の数倍も暑いに決まってる。チラリと窓の外を見る。雲一つない。快晴だ。素晴らしいね。あはははは。

「…リョーマはあたしが死んでも良いのかー!」
「一向に構わないんだけど」
「oh! 何て冷たい子なの!」
「そのぐらい叫ぶ元気があるなら大丈夫じゃないの」
「…うぅ」

色々な気持ちを抱えながら、うなだれてると。パタン、そしてゴンッ、と言う音。どうやらリョーマが本を閉じて、その辺に放り投げたらしい。狙ってるのかそうでないのか、見事にマンガはあたしの頭に命中。あの、真面目に痛いんですが。抗議しようとして、リョーマを見ると、ベッドに寝転がっていた。

「リョーマー…寝るの?」
「寝る。…起こさないでよ」
「怖いよ。…おやすみ」
「ん」

まもなく、寝息が聞こえた。相変わらず、寝つき良いなー。数秒しか経ってないのに。
…そーっと立ち上がって、ムカつくほど可愛い寝顔を見てたら、怒る気も萎えてしまった。くそう、こうなったらあたしも寝てやる!

起きないように、すーっとベッドに腰・足・そして頭を乗せていった。よし、ベッド進入成功。運良くリョーマは端っこで寝ていたので、スペースがあった。これなら多少動いても大丈夫…なはず。うーんと身体を思い切り伸ばした。
そして横に動かせる。リョーマの背が目に入った。(ピン!)いーこと思いついた、っと。
ゆっくりと身体を反転させて、少しずつ動き、ぴたりとリョーマの背中と自分の背中を合わした。汗で濡れた服の感覚と背中の感触とこの温い感じ。うん、何か変態みたいだが、イイ!

「んー…」
くぐもった声が耳に入る。リョーマにとっちゃ、暑いんだろうなー。まぁあたしはリョーマだから気になんないけどね。後ろから抱きつこうとも考えたけど、それは流石に怒るだろうから、これぐらいで勘弁しといてやろう。…眠くなってきた……寝るか。
「(オヤスミなさーい)」

それから、リョーマの寝相により蹴られてベッドから落っこちて、痛さであたしが目覚めたのは数十分後の出来事。

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