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ミッドナイトテンション

「いてっ」
「あ…」

むぎゅ、と腕を踏まれて目が覚めた。目を開けて、踏んだ人物へ目をやる。と言っても今は深夜、何も見えない。見えなくてもさきほど漏れ出た声と気配でわかったエリーは腕をさすりながらその名を呼ぶ。

「ちょっとリョマさん、何するんですかー」
「…」
「え、まさかの無視?」
「……」

ガチャリ、バタン、という音はドアを開け閉めした音だろう。こんな夜中にどこへ行くのか、トイレか水か。何にせよ無視とはひどくないか。いつものことだけれど。エリーは仕方なく目を閉じた。闇の中で、扇風機とクーラーの音と涼しさだけを感じていた。

エリーの部屋にはクーラーがないので夏の間はリョーマの部屋に寝させてもらっている。扇風機で我慢しろとか菜々姉の部屋に行けとか何で俺が、とぶちぶち言っていたが、起床するべき時間が同じ方が都合がいいだろうと両親に言いくるめられたリョーマはしぶしぶ了解した。ベッドには入らないことと自分の睡眠の邪魔をしないことを条件にしながら。
エリーにとっては涼しい部屋で大好きな子と一緒に寝られるので万々歳だ。一緒にとはいってもベッドと床(に敷いた布団)ではいささか距離があるが、それでも同じ空間にいられるだけでエリーは幸せなのであった。


ガチャリ、バタン。
しばらくして再びドアの音が聞こえてきた。どうやら部屋の主が戻ってきたらしい。

「おかえりー」
「ん」

目を開けてもやはりその姿は見えなかったが、リョーマはベッドに潜り込んだのがわかった。エリーは寝転がったまま声をかける。

「ねえねえリョーマ、起きてるー?おーい」
「…何、うるさいな」
「あ、さっきあたしを踏んづけといてひどい。おかげで目ぇ覚めちゃったんだけど」
「昨日踏んだときは起きなかったじゃん」
「そうだっけ?…って、昨日もやったんかい!」
「ふわあーあ」
「はいはーい!謝罪を要求します!」

エリーは声だけで怒った。もちろん本当に怒っているわけではなく、単純に構ってもらいたかっただけだった。リョーマはというと、お前が大の字で寝てるから悪いと思ったが、どうにも眠かったので声だけ謝った。

「…悪かった」
「おう」
「じゃ、おやすみ」
「え、ちょいちょい待ち待ち!」
「…まだ何かあるの?」
「いやだから目ぇ覚めたからさ…もう少し話さない?」
「やだ。寝ろ」
「じゃあそっち行っていい?」
「追い出されたい?」
「……ナンデモナイデス」

これ以上何か言ったらマジで追い出されることを察知したエリーは黙った。しばらくして、穏やかな寝息をエリーの耳は感知した。

「…相変わらず寝るの早いなあ…」

元より眠かったのだろうが寝つきのいいこと!自分もわりとそうであるが何故か今は目が冴えていた。ゲームをやろうにも明るさや操作する音がリョーマの睡眠の邪魔をするだろう。自分の部屋は暑い。というかそもそも明日(もう今日だろうか)は学校である。

「寝よう…」
起きたら踏んづけたことをネタにリョーマに何かお詫びしてもらおう、と密かに思いながらエリーは目を閉じた。

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