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undeveloped underwear

「あっリョーマいいとこに!」
「……」
「こら逃げんな!お願いだからあああ…」

水を飲もうと1階のリビングへ行くと、畳の部屋にいたエリーから声をかけられた。無視して2階へ戻ろうとしたら、立ち上がってこちらに向かってきたエリーに腕を掴まれる。そしてそのまま腰に抱きつかれた。もはやこれぐらいでは動揺しないリョーマであったが、冷静に引きはがそうにも右手はエリーに掴まれたまま、左手にはさきほど注いだ水が入ったコップを持っていた。

「………何なの?」
仕方なく、聞くだけ聞いてやる、だから離れろ、と実に不本意そうな声を出した。
「うん、あのね」
珍しくさっと離れたエリーは本当に困っているようだった。

「さっき菜々子さんが出かけたから、あたしが代わりに洗濯物たたんでたんだけど」
「けど?」
エリーは俯いていた顔をばっとあげ、
「菜々子さんと倫子さんの下着のたたみ方がわからないんだ!」
助けてくれ!と言ってきたのだった。

「…は?」
これにはリョーマも驚き、一瞬何を言われたのかわからなかったが、言葉を理解したあとでも呆然としてしまった。

「なに、言ってんの、あんた」
「そのままの意味だよ!女性用の下着のたたみ方わかんなくて困ってんだよう」
「そんなの俺がわかるわけないじゃん」
「だってあたしだったわかんないもん…持ってないし」
「…エリーはつける必要ないしね」
「そうそう、だからたたんだことないしどうしようかと」

リョーマはさらっと嫌味を言ったつもりであったがエリーにはきかなかった。一応女ではあるもののまだまだ未発達体型であるエリーだが、別段自分の身体にコンプレックスを感じてはいなかったからだ。リョーマははあ、とため息をつく。

「俺だってないから」
「えー家族の洗濯物たたんだことないんか君は!」
「じゃああんたはどうなの」
「…さーせん、ないです」
「…はあ」

エリーにとってもリョーマにとっても女性用の下着はつけたことも触れたこともない、未知なる世界であった。
なすすべなく、階段前のろうかで二人、立ち尽くす。

「…ていうか、普通にたためばいいんじゃない?」
「その普通がわかんないだって…」
「で、俺にどうしろと」
「うむ、一緒に未知なる世界を切り開いてもらおうかと」
「つまり?」
「たたみ方いっしょ考えよ?」
「断る」
「即答!」

リョーマはくるっと身体を反転させ、階段を上り始めた。エリーが慌てて追う。

「ちょっと薄情もーん!」
「…あんた一応女なんだから、自分一人で考えてよ」
「あー普段女扱いなんかしないくせに!こういうときだけずるくないですかねー!」
「知るか!」

階段で騒ぐ二人に朗報が入る。玄関を開ける音である。

「お?菜々子さん帰ってきたかな?」
「じゃあいいでしょ、服掴んでる手離せ」
「おーい、おまえら二人の声外まで聞こえたぞー。仲いいねえまったく!」

訂正、悲報であった。

「……」
「……」
「な、何だよ二人そろってその目…」
「はあ…」
「南次郎さんけーわい…」

ただ家に帰ってきただけなのに子どもたちから責めるような目で見られた南次郎は、納得いかない様子で二人に訳を聞きただした。しかし二人は完全にやる気をなくしたようで、説明するのもめんどくさがった。

「素直に菜々子さん待とう…」
「そうしたら?」
「うん」

と言って二人は階段を登っていった。リョーマはいつものことだが、エリーに無視されるのは初めてで少しショックな南次郎であった。娘がいたらこんな感じなのかねえ、と思った。そのあと気を取り直してたばこでも吸うか、と縁側に向かっていった。
畳の部屋を通ると、あまりきれいにたたまれているとは言えない洗濯物と、たたまれずに放置されている洗濯物を見かけたが、その中途半端な光景の意味は菜々子が帰ってくるまで南次郎にはわからないままだった。





ネタをありがとう兄様

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