dream | ナノ



自習時間だった。用意されていたプリントの解答はまばらだ。130年前の時代の誰々が何々をどうしたなんてちっとも興味がわかないエリーは、窓の外を見ていた。
色んなものが見える。青い空、花壇に植えられている草花、道端に落ちている紙屑、笑いながら渡りろうかを歩いていく女生徒たち。
特に感慨もなくぼーっと眺めていたエリーが、「あっ」と小さな声を上げた。

「ニワトリだ」
「…」
「ほらほらリョーマ、あっちにニワトリがいる」

青学と隣接する一般の家に飼育小屋のようなものがあるのを発見した。そこで白い羽をバサバサ揺らしながら、庭を駆け回るニワトリがエリーの目に入った。
とんとん、と隣の席でやはり面白くなさそうにプリントの問題欄を埋めているリョーマの腕をつつく。
「良かったね」と一言、素っ気なく返されたが気にせずに、ぽんぽん思い浮かんだことを口にした。

「あれ卵産めんのかな」
「さあ?」
「美味しいかな」
「食べてこれば?」

リョーマは筆箱から消しゴムを取り出し、プリントに手をかけた。先程から一切エリーに目をやらない。ツレない横顔がかわいいと思ってしまう自分はどうしようもない。

「どうやって?」
「そっから飛び降りて」

淡々と言い放たれた言葉にエリーは眉を顰めてリョーマを見る。

「…君はさり気無くあたしに死ねって言ってんな」
「うん」
「…」
「…」

開けっ放しの窓からそよぐ風が二人の髪とプリントをなびかせる。飛ばないように筆箱で押さえつけ、それからエリーは腹をさすった。

「…腹へった」
「そ」
「…あーもう寝る!おやすみ!」
「はいはいオヤスミ」

コケコッコー、と遠くから聞こえるニワトリの鳴き声をBGMに、エリーは机に突っ伏したのだった。

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