ストレスの原因

目覚まし時計がけたたましく鳴り響いた。布団から体は出ないように手を伸ばして時計を掴んだ。目覚まし時計の電源自体を切ると、また眠りについた。
すると次は携帯が鳴り出した。アラームは設定していなかったはず。電話だろうか。
瞼をうっすら開いて誰からかわからないまま電話に出た。

「もしもし…」
「グッ、モーニン国見!!!!!よく眠れたー!!?抱井がモーニングコールに来まし」

目覚まし時計よりも大きい声にすぐ電話を切った。最悪だ。あと五分は眠れた筈なのに目が冴えてしまった。
仕方なく身を起こして布団から出た。

朝食を済ませると制服に着替えて、あくびをしながら家を出た。あと少し、あと少し眠れた筈なのに。先程の電話に苛立ちを覚えながら学校に向かった。
校門前に辿り着けば、いつもの人物が自分を見つけて高く跳び跳ねていた。

「おっはよー国見!!抱井のモーニングコールを途中で切るなんて酷いよー!!何か今日はちょっと目ぱっちりしてる?抱井のおかげ!?」

いつものように無視して通り過ぎるつもりだったが、睡眠を妨げられた恨みがある。頬を掴んで引っ張った。
が、痛がる素振りは見せず、絶えず笑っていた。気持ち悪いとしか思えなかった。

「キャー!!!いきなり頬を触ってくるとか国見大胆!!!ギャップだね!!!抱井嬉しくて顔洗えない!!!」

どれだげポジティブ思考なのか。部活の先輩にもこのような五月蝿く、似たようにポジティブな人がいる。彼を過らせることに更に苛立つ。
頬から手を離すと靴箱に向かった。あんな五月蝿いが一応風紀委員で、毎朝校門前で挨拶運動を行っている。なので着いてこれないのだ。

「なんならナイトコールもするよ!?よく眠れるように子守唄も歌うし電話越しで読み聞かせだって!!!楽しみにしててねー!!!」

彼女は国見の一番のストレス、抱井いづみ。高校に入学してから何かと付きまとってくる人物。部活の似たような先輩も鬱陶しいが、彼女もかなり鬱陶しかった。
何よりも彼女は人の話を聞かない。問いかけた質問は一切答えないし、話を反らしてくる。そんな彼女がストレスで堪らなかった。関われば更にストレスがかかる。出来る限り無視し続けていた。
が、彼女の行為が収まることは無かった。

「あの子も可哀想に。少しは構ってあげたらどうなの国見ちゃん?」

彼女を連想させる彼が、いつの間にか国見の隣を歩いていた。彼は及川徹、部活の先輩でバレー部のキャプテン。中学の頃からお世話になってるがあまり好きではない先輩だ。彼の性格を知っていたら誰もがそうだろう。

「そしたら更にウザくなるんで。及川さんみたいに。」
「えっ?えっ?何で俺?」
「アイツと及川さん似てるじゃないですか。でも及川さんは一応人の話は聞けますよね。」
「国見ちゃーん。俺のガラスのハートが割れちゃうよー俺、国見ちゃんに見下されてんの?」
「別に見下しても見上げてもないですよ」
「国見ちゃんなんかもういい!!!!」

うわぁあんと嘘泣きなのかわからないが声を上げて彼は走っていった。全く話を聞かない彼女と比べれば、たいしてウザく無いことがよくわかった。それに彼の反応は面白くて好きだ。ドSだからこそ打たれ弱いから。
比べて彼女はドMなのかもしれない。無視されることも痛めつけられるのも嬉しいのならこのまま無視し続けても無意味だ。

彼女が自分から離れる策を考えながら靴箱を開いた。下靴を入れる場所に袋に入れられたクッキーが入っていた。甘いものは脳の回転が早くなるとか聞いた気がする。彼女からの物だろうが、気にしなかった。甘いものは嫌いではない。袋を靴箱から取り出すとクッキーを一つ口にした。

結構うまい。


2013.10.29


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