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「何故私を嫌う。私が女だからか」

「そうだ……そうだとも。女であるお前が、何故私よりも高く評価されているのか。国主の近親だからなどと言う、馬鹿げた理由で……」

 韻はふっと笑った。
 今更、何を言い出すかと思えば、この時代錯誤な物言いである。
 ほとほと呆れるしかない。

「領地を預かる者にとって、重要なのは性別ではない。いかに民の生活を充実したものにできるか。いかに安定した生活をおくらせことができるのか。いかに、満足させられるか……」

「民など、甘やかせば強欲になる。国家の財政を危うくし、全てを食らいつくしてしまおう。貴女の言い分は、ただの理想でしかない。それに……」

 浩の言葉が途切れ、少し離れた場所からの爆発音に空を仰ぐ。

「私の部下がうまくやってくれたようだ。頼みの兵たちは、もうお前を助けにこれないぞ」

「な……何をした」

「ちょっとした落とし穴さ」

 剣を下しながら、韻も空を仰いだ。

「確かに私の言い分は理想でしかない。だが、理想のない国家など、国民が帰るべき家足り得ないとは思わないか……」

「理想が何だ。夢ばかり見て、結局の所現実が見えていないではないか。この魁は、乕に絶対勝てない。民を思うのならば、戦を無くすのが一番最良の手段だ」

「我々を下したとて、乕の君主が戦を止めるとは思えん。近隣の異民族を滅ぼし、果ては西の列強にまで戦いを挑むだろう……結局は同じことだ」

 そう、同じことだ。
 韻の胸に、何かが小さくうずいた。

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