石畳の床に、高い天井。
 天井の一部には色硝子が嵌め込まれ、昼間には鮮やかに輝く。
 部屋の最深部には、深紅の天鵞絨の絨毯が敷かれ、見事な玉座が置かれている。
 その部屋は、西方の様式に則った作りだ。



「貴方はいつから変わってしまわれたのか。いや、私が知らないだけで、最初からそうだったのか……。私は貴方の近くに居たつもりだったのに、貴方は遥か地平の彼方に居たのだ……」

 張皖は、父の後ろ姿にぽつりと呟いた。
 旅立つ前、志暉から贈られた鳳紅の剣を手に持って。

「私を殺しに来たのかね。国を憂い、民を憂い、帝位に就いた、この私を」

 振り返った男は、張皖の知らない男だった。
 声や、姿形は父張瑩のそれであるが、何かが根本からして違う、と感じる。
 妖気。
 そう。妖気と形容するに相応しい、ぞっとする程冷たい空気を纏っている。

「貴方が憂いているのは、本当に国や民なのか。何も見えていないその目で、何が出来よう……」

 がちゃ、と瑩が剣を抜き放つ。その刀身には、鈍い輝きが宿っていた。
 瑩の剣の輝きに呼応してか、鳳紅の剣もうっすらと紅く輝く。

「お前は大人しく私に従っていれば良い。直に乕が我等の軍門に下ろう。さすれば、我が大望は果たされる……」

 そんな事の為に、あんな酷い仕打ちをしたのか……。
 剣を握る張皖の手に、力が篭る。

「天下泰平の為に、多少の犠牲はままならなぬ。お前に、千年の泰平をくれてやろうと言うに……何ぞ、その貌は」

 言って瑩は張皖に剣を向けた。

「んな馬鹿な事をしてるから、あんたは殺される事になるんだ……覚悟しておけ」

 何処からとも無く、張韻の声が響く。
 ここには誰も入れないはずなのだが……。

 天窓が割れ、硝子片が天を舞う。
 炎に照らされた硝子片は、恰も天界の星々のように輝き、瞬く間に地上へ落ちた。
 同時に、小さな人影が降り立つ。

「稽州晏県、張秀が娘、張紅藍見参!」


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