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◆2011/10/04 14:50 苦情x0
 ボーっとしているユリアンに、箱から服を取り出しながら店主は満面の笑み。
 そして対照的なユリアンの顔。

「わー、おもしろい。なんなの、コレ。悪趣味ネー」

 リーが店主の持った服を奪うと、ひらひらしたスカートだった。
 他言無用とは、本人にも気付いている事を話すべきではないのに。

「ユリアン様が女装なされば、絶対お似合いです」

 などと嘯く店主をひっぱたきながら、リーはスカートを箱ごと放り投げる。

「……俺の服でも着てけ。この店にも何着かあるはずだ」

 リーは店主を蹴り飛ばしながら、再び二階へと向かった。
 すると、すぐさま窓に服が一式かかっているのが目に入る。
 黒いズボンに黒いベスト、そして黒いジャケット。
 シャツは無いのかと見回してみると、パリっとノリの効いた白いシャツが近くの棚の上に置かれていた。

「本気で俺と同じにしなくてもいいのに」

 リーは苦笑しながら服を手に取り、階段を下りる。
 黒ければ血は目立たないだろう。ただ、埃は目立ちそうだが。

「ユリアン様、こっちの短刀は如何でしょう。呪いの類いは無い、普通の短刀で御座いますよ」

 見ないうちに店主は早速商売を始めていた。
 油断も隙もあったもんじゃない。
 リーは店主の禿げ散らかした頭をひっ叩き、もう片方の手で服をユリアンに放り投げる。

「着替えろ。俺達は二階にいる。終わったら声をかけろ」

 コクンとユリアンが返事をしたのを横目に、リーは店主の耳を引っ張りながら二階へ上がって行った。
 窓からは、朝日が差し込んで来ている。


陛下と商人











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