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◆2011/10/04 14:49 苦情x0
 
「それにしても、今日は運がねぇな。良い女だと思ったらぼったくり。おまけに連れが半狂乱と来たもんだ」

「ぼったくり? またですか」

 店主はリーに酒を注ぎながら苦笑した。
 よくある事である。

「今回は最悪だ。さぁ、始めようかって時に金の話題を出しやがった。何が『安くしとくわ』だ。足元見やがって」

「有名税、と言った所ではありませんか。リー様は企業家として有名なお方ですからな」

 店主は酒瓶を持ったまま、リーの隣に立つ。
 リーは窓の淵に座り、再び窓の外に視線を移した。もう人気は無い。

「有名税なんぞいらんわ。しかも興ざめして部屋から逃げ出しゃユリアンがアレだ」

「ご苦労様でした」

 差し出された杯に店主が酒を注ぐ。

「しかしあの剣、リー様がお選びになられたのでしたよね。リー様が予見した通りになられたようですが」

「それ、他言無用だぞ。あの復讐の女神と相性が良かった。と、言う事は、だ」

「つまり、ユリアン様は女性であらせられる……と言う事ですよね。あ、こちらも他言無用ですね。解っております」

 酒瓶の中身が無くなった。
 慌てて店主は近くの棚に瓶を取りに行く。

「あの女神サマは女の守護神。対象が女じゃなきゃ、暴走する事もなかったはずだ。しっかし暴走するタイミングがなー」

 リーは杯の中に残っていた酒を呷った。


陛下と商人











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