運命の赤い糸の代わりに血染めの包帯
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恋人の変わり果てた姿にわたしは絶句した。

交通事故で重体となっていた彼にようやく会えたというのに、心配の中にも少しだけあった嬉しさは全て吹っ飛んでしまった。

「あぁ、いろは。来てくれたんだ」

ベッドに寝ている彼の腕には複数の点滴が繋がれていて、全身を覆う包帯は所々に血が滲んでいる。

「だ、だいじょう、ぶ……?」

大丈夫ではないことは一目瞭然なのに、わたしはそれしか言えなかった。

うん、と返事をしながら、左京君は電動ベッドを動かし、体を起こす。

「腕の骨は無事だったんだけど、火傷が酷くてね」

それ以上かける言葉を見つけられないでいると、左京君はそれに気付いたのか「まだ痛いよ」と、笑ってみせた。

「右足も動かないままだし、火傷の跡も全身に残るらしいし、もう死んだほうがマシだよね」

「そっ、そんなこと言わないで!」

「はは、ごめんごめん。いろはがあまりにも心配そうにしてるから」

左京君の言葉に、病室に入ってからずっと眉間に皺を寄せていたことに気付く。

お見舞いに来たのにわたしが心配させるなんて……。

「……ごめん」

「そんな顔しないで、大丈夫だから」

無理して浮かべた笑顔はわたしの大好きな彼のままだったけれど、それが元気な頃の彼の姿を思い出させ、余計に居たたまれなくなる。

「さきょうくん……」

彼が一番辛いのはわかっている。わたしが感じたことがない程強い痛みだってあるはずだ。

それでも、弱いわたしは泣かずにはいられなかった。

「ほら、泣かないで」

冷たい手が頬に触れて涙を拭う。

「いろはを置いて死んだりしないよ」

「さきょう、くん……」

「大丈夫だから、ね?」

名前を呼ぶことしかできないわたしの手を、左京君は強く握ってくれた。

それに応えるように、わたしは頷く。

「おいで」

「でも……」

「いろはを抱きしめると元気になれるんだよ」

手を引かれるがままに近付くと、ベッドに連れ込まれ、強引なキスをされる。

「んっ……さきょ、くん……っ、体……」

「平気、でもないけど、いろはに触れられない方が辛いから」

お願い、と言われてしまい、戸惑いながらも瞳を閉じてわたしは応える。

私の体を撫でる暖かい手ににうっとりとしていると、何かが首に巻き付いた。それはすぐにキツくなり、私の喉を締め付ける。

「な、なっ……」

見開いた目には微笑を浮かべた左京君の姿が映る。

わたしを締め付けるソレを左京君が握っているのだと気付いたときには遅かった。

「ずっと一緒にいようね、いろは」

「………ぁ……っ」

左京君の額には脂汗が滲んでいた。痛みに顔を歪めながらも尚、左京君は力を緩めない。

抵抗しようともがいてみても、男の子に全体重をかけられていてはどうしようもない。

死という恐怖以上に、彼を恐ろしく感じてしまったことが悲しくて、わたしはまた涙を零した。

「怖くないよ。俺もすぐにいくから、待っててね」

頭の中には左京君の優しい声だけが響いている。

「ほら、見てごらん。これが俺達を繋いでくれているんだよ」

酸素と共に薄くなっていく視界の中に、血に染まった包帯が見える。

それが、最後に見えたわたしの世界。

END


題名は診断のお題より。

リアリティがなさすぎるけど…。しゃべる力あったら死ななくない?とか、そんなのはやめたげて!

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