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You know I?E
2011/05/18 水 00:01
karusaku



--しかしながら、川べりの道がいつまでも続く訳ではなく。


美琴が振りほどけずにいた腕に、俯いたまま掴む黒子に、美琴はおずおずと切り出す。


『…あの…黒子さん?そろそろ…?』

『!!も、申し訳ありませんの///!!』

顔を真っ赤にして、美琴から慌てて距離を取る黒子。
13歳の黒子より長めのツインテールがふわっと揺れる。


『えっと…そろそろ、喉が渇いたなーなんて。』


大人な黒子が恥ずかしそうに頬を染める姿に、美琴も少しだけドキリとして。
美琴はこの気まずい雰囲気を打破する為、わざとらしく周囲を見渡す。


『す、すぐ、あちらにカフェがありますので…申し訳ありませんの!!』

黒子はそう言うと、90度直角に頭を下げる。


『いやいや!そもそもこんなところに飛んできちゃった私がいけないし!?』

『いえ!お姉様のせいではありませんの!く、黒子がいけませんの!』
『それを言えば、こっちの私が黒子にちゃんと言っておけばよかった訳だし!?』

『きちんと問いたださなかった私がいけませんの…あ!!』

『?ど、どうしたの黒子?』

『…今、わたくしの中に何かが降りてきましたの!!』

『ちょ、ちょっと待って!黒子、先にお店入ろう?ここで立ち話もなんだしさ。』

『そ、そ、そうですわね!!こちらですの!』



明らかに動揺している黒子の案内で、美琴はカフェへと入る。


案内されたカフェはすごく落ち着いた雰囲気で。
美琴が思わず私、少し浮いてるかも…と思ってしまうくらいな店だった。


店員のおススメらしいテラスに出て。
動揺している黒子に代わり美琴がアイスティーを2つ頼む。


『えっと黒子、それで…何が降りてきたの?』

『じ、実は…。』


腕を祈る様に胸の前で組んで、がたがたと肩を震わせる黒子。
美琴はじっと黒子の次の言葉を待った。


『あ、あれは確か…秋、そう秋でしたの。常盤台の頃ですの。』


『う、うん。』


『とある日。その日、わたくし達は、佐天さんと初春と買い物に出かける約束をしていましたの。』


『そ、それ…も、もしかして…?』


『お寝坊さんなお姉様はやはり時間ギリギリまで寝ぼけてらっしゃって…。』


『………。(ごくり)』


『ふと気が付くと。やけに大人びたお姉様がいらっしゃって…。』


『それって…!!』


『でもお姉様はわたくしが何を聞いても、とぼけるばかりで…。』


『それ、絶対にこっちの私よね…?楽しんでやがったのか…!!』


『佐天さんも初春も驚いていて…。でもお姉様はとぼけるばかりで…。』


『……やっぱり、悪ノリしてたって訳ね。』


『それから………!!』




---お待たせ致しました。


美琴は店員が運んできたアイスティーを受け取る。
そのせいか話も中断してしまって。


黒子が思い出したという事は。
やはりこっちの私が、あっちに来ていたという事か。


美琴は自分の事ながら、呆れてしまう。
こっちはこんなにテンパってんのに、あっちの私は何をしてるのよ、と。



----失礼します。



『で?結局、どうなった訳?』


店員が去っていくのを見届けながら、美琴は話の続きを求める。


『そ、それが…わたくしもその日の事はうろ覚えで…所々、記憶が飛んでいると言いますか…。』


『うーん…どういう事なんだろ。』


『わたくしにもさっぱり…その日は、もやがかかったみたいに思い出せないのです。』


『今の黒子が思い出せないのはしょうがないよ。かなり昔の話だしさ。』


『も、申し訳ありませんの…。』



結局、話は振り出しに戻る訳ね、と美琴はアイスティーをストローでかき混ぜながら独りごちる。


この黒子が思い出したという事は、過去にはこっちの私が確かに現れてたってこと。
つまり、それが成り立つのであれば、私もいつかはあっちに戻れる訳で。

まぁこの時間が、黒子の言っていた1つの可能性に過ぎない説も否定はできないけれど。
こういうのをパラレルワールドって言うのよね、確か。と美琴は思い出す。


『ね、黒子。その日の私がいつもの私に戻ったのはいつ?』


『…よ、夜にはいつものお姉様だった気がしますの。』


『って事はやっぱり、夕方辺りには元に戻るってわけだ。』


『わ、わたくしはよく覚えていませんの…申し訳ありませんの。』


『だからそれは仕方ない事だから。気にしないで?ね?』


『あ、ありがとうございますの…。』


黒子は思い出したかのようにアイスティーに手をつける。
なんだかその仕草がぎこちない気がするのは気のせいだろうか、と美琴は思う。


しかし、考えていても始まらないわけで。


『まぁ、多少気が楽になったわ。黒子のいう18:15辺りがポイントだろうし。』


『…は、はいですの。』




美琴は店のアンティーク時計で時刻を確認する。
現在時刻は13:15。


この時代この時間で過ごすのも、恐らく残り5時間くらいだ。
『黒子と買い物を済ませて、23歳の私に文句の手紙でも書いてたら、あっという間でしょ?
それまでは気楽に未来を観光する事にするわ。』


『く、黒子は何か大切な事を…思い出せない気がしますの…。
何なのでしょう…この感覚は…っ!!』


『まぁまぁ。落ち着いて、黒子。何とかなる気がしてきたし。』


『は、はいですの…。』


『それに、もし万が一、私が元の時間に帰れなくても。
こっちで中学からやり直すのもそれはそれでおもしろいし。
佐天さんに初春さん、それに……黒子もいるんだし、ね?』


『…………お姉様。』



---私を知っている人がここにはたくさんいるんだから。

美琴は黒子に強く微笑んだのだった。

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"You know I?F"
つづきますの!でもそろそろゴールが見えてきましたの!



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