スタンド能力:他人に自分を認識させないようにする能力。


貴方の吸っている煙草の副流煙を貴方の隣で吸い込んで、自分の寿命を縮める一件自傷行為にも似ている行為を行うのが、私の体と貴方の体は同じものによって寿命を縮めていると、まるで一種の絆の様だと思う事が出来て、其れが嬉しくて仕方がないのだけれど、貴方は私と煙草での繋がりが嫌いらしい。血族の絆は自らの痣を通して感じているというのに、貴方は私に「近づくんじゃあない」と言って、火を付けたばかりでまだ長い煙草を落として、その長い足で踏みつけるのだ。本当に、残酷なことを言う人。私は貴方を感じていたいだけなのに。貴方は何時だって、煙草の煙を吸って咳き込んだ私を咎める様に、私とは比べ物にならないくらい大きな手で頭を撫でていて、

その行為には深い意味は無いのだろう。きっと私のことを歳の近い妹だとでも思っているのだろう。頭の中ではそう思っていても、必ず何処かで期待している自分がいる。私は、それは下品で、浅ましく汚いことだと自分で自分を罵倒し、それにより安心感を得ている。なんと愚かなことか。これは自らを罵倒し、傷ついたふりをしている行為に近い。悲しい顔をしていれば承太郎が心配してくれるなんて。1人でいることがが好きなくせに、周りに自分を認識してもらうことが苦手なくせに、悲劇のヒロインぶって、承太郎だけには私を認識して欲しかった。

こんなことをするなんて、まるで承太郎の取り巻きと同じだ。甲高い声で「承太郎」「承太郎」って言う事しか能の無い、承認欲求の塊だ。私はそれが嫌で嫌でしかたがない。こんな事になるくらいなら私達を始末しに来たスタンド使いの方が、忌まわしきDIOの配下に加わった方が良かったのかもしれない。何も考えずに、ただDIOの毒牙にかかり熱狂的に信行していた方が、まだ、今の様に惨めな思いはしなかったのだろうと思う。


「お前、俺のことが好きなんじゃあねぇのか」


遂に、ばれてしまった。今ここにいるのが私と承太郎だけで本当に良かったと心から思う。ポルナレフやジョセフさんがいた日には騒がれるに違いない。彼らは男子高校生のように人の恋愛事情に敏感で、食いつきが早い。もしかすると私の感情も彼らに勘付かれているのかもしれないとも思う。そうであれば、ここに私と承太郎しかいないのも彼らの配慮か。だかしかし、ただでさえ急がねばならないこの旅で、彼らにこんなことが出来ただろうか。そう考えると、偶然食料の買い出しに出て行ったか、どっちにしろ、みんながいなくてホッとした。

「聞いてんのか」

眉間に皺を寄せて不機嫌そうに言った。嗚呼そういえば久方ぶりに承太郎の声を聞いた気がしてならない。今迄会話をする機会が余り無かったのは事実だ。私はこれまで生きていたように、仲間であっても極力自分を認識させないようにした。それが私の能力で、私の願望だ。これじゃあ花京院から聞いた彼の過去と大差ないじゃあないか。私は昔の彼と同じだ。誰も信じられなくて、そのうち承太郎まで私を見捨てて何処かへ行ってしまうのだ。余りにも惨めとしか言いようがない。

どこで私は道を間違ってしまったのだろうか。私が、承太郎に対して“好き”とかいう汚い感情を持ってしまったから、こうなってしまったのだろうか


「わ、私が、承太郎のことを好き?そんなこと、あるわけないじゃない。承太郎は、仲間よ。仲間にそんな汚らしい感情なんて、持つかしら」

思っていたよりも情けない声が出てしまって恥ずかしい。声も震えて、まるで「はいそうです」と言っているようなものではないか。承太郎に軽蔑されるのが嫌で、私を見て欲しくなんかなくて、スタンドを使って私に対する認識を薄くして、そのまま走った


「名字」

承太郎が叫んでいるのが聞こえるが、私には知ったことではない。こんな汚い感情を持っている自分には関係がない。嗚呼、このまま誰か殺してくれ。

ふいに、腕を掴まれた。私の足と承太郎の長い足とでは走る速さに違いがありすぎて、私はやすやすとスタープラチナに捕まってしまった。私に対する認識を薄くしたにも関わらず、恐ろしい奴だと実感する。スタープラチナが精密性に優れていたのが仇になってしまったと自分の頭の弱さ加減にうんざりした。

_____


承太郎を好いている私が言うのもなんだけれど、彼は存外人間だった。人間らしさを持っていた。“恋”とか“承認欲求”を害悪と感じ自らの神を信じている私なんかよりはよっぽ人間として出来ていて、楽しんだり悲しんだりができる。どこも欠けているところがなく、完璧な人間であった。それは遠い昔。とまではいかないけれど、私がまだ何も知らない餓鬼だった頃に憧れていたものと似ている。文武両道、才色兼備。優しくて家はお金持ち。私とは全く逆の雲の上の存在。それは私の神という概念に酷似していて、承太郎は人間だけれど神に近いものなのだと思って、でも本当に近いものなのであれば私は罰を受けなければならないのだとも思った。イエス・キリストが磔にされた13日の金曜日の様に。或いは、仏罰の様に。

神に似ていた眼前に佇むこの男を悲しむ様な顔にさせた私は、磔、火炙りなんかよりも救済のない罰を受けなければならないのだろうか。

「何で逃げた。」

大きい図体とは裏腹に、承太郎は悲しみに耐える様に眉間に皺を寄せて、こんな顔にさせたのは自分なのだと思い知らされて嫌になった。私の中の神だとか宗教だとか、そう言うものと関係なく、単純に承太郎の悲しませたくなかったし、そんな顔をさせた自分に少しばかり腹が立った。

「ごめんなさい承太郎、何でもないわ。早くホテルへ戻りましょう。」


本当に、本当に、ごめんなさい。そんな事を言ってみても、承太郎は眉間に皺を寄せて何も言ってはくれなかった

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