飴村乱数/
ドクトル、ドクトル、って、馬鹿の一つ覚えみたいに言う君が大嫌いだった。いつだって僕は君の心の臓の中に入り込むことなんてできなくて、胸中が悪いもので満たされていく感覚が気持ち悪くなる。この世で1番嫌いな寂雷を好きな君も嫌いだ。稚拙で、小鳥の鳴き声みたいに愛おしげな声も、聞いていると鉛のように心持ちが悪くなるのに、しかしそれを耳を塞いで聞こえない振りをするなんて芸当は出来なくて、いつだって僕は、1人でこうして君の嫌いな点を並べることしか出来ないのだ。




山田二郎/
生理前、私が大好きなエビフライを食べていたら「エビってゴキブリと成分同じなんだぜ」と自慢げに話してきたのがとてもムカついたので、「そんなんだからテメェはいつまで経っても童貞なんだよこの短小包茎」と詰ったら「俺はアンタで卒業するから別いいんだよ!」と意味不明なことを言ったので、そのまま兄も弟も不在のコイツの家に無断で上がって、住人が居ないままの部屋を愛用のタバコの臭いでいっぱいにしてやった。ざまあみろ。




山田二郎/
好きなタイプは、と聞かれたので、どう考えても目の前の男とは逆の特徴の男を想像して答えてみる。「つり目」「長男か一人っ子」「身長が190cmある人が好き」
へぇー
あっ、意外と無反応。
「…俺もう帰るわ」
「マジ?早くない?」
「牛乳買いに行かないといけねぇの忘れてた」

可愛い。




神宮寺寂雷/
「先生、そろそろ、別れまょうか」
「…理由を聞いてもいいかな?」
別れるのが嫌だとか離れないでとか、そういうことの前にまず理由を述べさせる先生が好き。論理的だから。
私、理想主義者が嫌いなんです。あっ、先生の嫌いな飴村乱数と寝たからじゃないですよ、結果も出てないのに、頑張ったから評価してくれとか、精神論掲げて具体的な策を取ろうとしないだとか、そういうのが元来嫌いだって、先生も知っているでしょう?私先生の論理的な所は好きだけれど、もう、ダメかなって。だから、左様なら。
「君がそう言うのなら、仕方がないね。」
うるさい。早死しろよこの野郎。





神宮寺寂雷/
これが恋なのだわ。と言ったので、「いいや、それは憧れだよ」と訂正する。大人が子供を正常な道へと導くことが使命ならば、こういう使命もある。「あなたのしていることは訂正でもなんでもないわ。私自身の否定よ。」そう言う君だって、私に偶像を押し付けて否定している癖に。





碧棺左馬刻/
口の中が気持ち悪い。どうやら頬粘膜を強く噛んでしまったようで、歯の並びに平行してできているでこぼこな噛み跡を舌でなぞって、長年の積み重ねによって出来たこのでこぼこは一生治らないんということを自覚した。これチューする時どうすればいいんだ。気持ち悪くないか?
「処女みてぇなこと言うなよ」
いや私処女だし、何言ってんだこいつ。
「そういうの、男は興味ねぇんだよ。セックスにしか興味がねぇかんな」
「フーン、左馬刻さんもそうなんですか?」
「試してみるか?」
「顔が好きじゃないんで結構です」




飴村乱数/
人生順風満帆なのに、心に隙間が出来て、そこに隙間風が吹いて寒いと言う意味わかんねー自殺志願者(仮)の知り合いのオネーサンを気まぐれに抱いたら、その日から異常な程懐かれてしまった。

「らむだくん聞いてよ、今日ね、私の好きなメーカーのクリスマスコフレがさ〜」

あ〜〜うるせぇ

そんなん幾らでも買うしなんならコスメも服も全部僕がデザインするから、黙って早く僕に毎日ご飯作ってくれるようにならないかな




飴村乱数/
これはまるで葬式の様だ、と思う。彼との1日を、いつ来るかいつ来るかと待ちわびて、でも彼には遊び相手が何十人もいる訳で、だからこれはお葬式。もう会えないであろう貴方のことを思いながら、さようならという言葉も言えないまま。




山田一郎/not夢
赦されると思うな。おまえは神の加護もなく独りで死んでいけ。それがヤクザたるおまえの死に際に相応しい。久しぶりにこんなに他人に殺意を持ったのが久しぶりで、それがなんだか可笑しくて、ハハハと笑って見たものの、地獄に行くのは俺も同じか。ということを思い出してしまった。





無題/食道が熱い気がする。噛むタイプの口臭ケア用品ってなんでこんな不味くて美味しくないんだよ。ハッカ成分によって熱いのか冷たいのか分からない喉を撫でた。まるでディープキスみたい。





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