偽物の愛というのものは非常に陳腐で、下劣で、添加物が多く含まれている。まるで短時間で出来るインスタントラーメンだとかジャンクフードの様で、肉欲と独占欲と庇護欲でできた雑味の塊であるソレを、大勢の人間は「本物の愛」などと根本から信じきっていた。きっと消耗品と同じで、それら全ては飽きたら終わりなのに。



「でも、雑味は旨みを引き立てることだってあるんですよ」


存在ごと全てが偽物であるお前にそんなこと言われたくなんかない。そう意味を込めてじっとりと珈琲を差し出す安室を見るも、彼は涼しい顔をして肩をすくめる。そういう所が嫌いなんだ。雑味のあるものが本物に適うわけが無い。本物というのはいつだって高潔で、高尚なのだ。ハイブランドと海賊版の偽物では一目瞭然で、比べようがないのと同じ。



「まるで自分が偽物だと言っているような物言いではないですか。安室さん、若しかしてジャンクフードとか好きなタイプ?」



「偶に料理を作るのが面倒な時は食べますけどね、特に好きでも嫌いでも」


「恋愛も?」


「大胆ですね。いえ、生きてみると、結構偽物も良いかなって、そう思うんですよ。偽物でしか味わえないものもあるでしょう?カップ焼きそばと家庭で作る焼きそばと一緒。カップ焼きそば現象って言うらしいですね、偽物でも、偽物なりに魅力があるものなんです。」



そう言われてもなぁ、ズズ…と差し出された珈琲をを飲むと、いつもはおいしいって思えるのに、その時だけはよく分からない味がした。


「まぁ、要は経験って奴じゃないですか?」


「ってことは、安室さんは経験豊富ってことですか?」


「気になります?」


「いや別に」


「そう言わずに!」


「安室さん知ってます?執拗い男って嫌われるんですよ」


「あなたって僕のこと嫌いだったんですか?」


「好きでも嫌いでもないです。でも、安室さんの偽物だとか変わりはこの世に必要ないし、存在すべきでは無いとは思ってますよ。」


「…」


「あれ、照れてます?」





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