※暴力表現あり
私は男の人が大の苦手で、でも私の中にある雌の本能は男を求めているらしく、今までで何人もの男と恋人になったり肉体関係を続けていた。これらの行為はより一層男への嫌悪感を深めていくばかりだったけれど、でもやっぱり止めることはできなくて、イライラと男へのウザったらしさだとか殺意だとかを高め、時には周りに誰がいようとも付き合っていた男に暴行を加えていた。邪魔な物を消す時の快感ほど気持ちのいいものは無い。しかし、それをする度に昔馴染みの同僚が「そろそろ、やめたらどうだあ」なんて、私の事なんてどうでもいい癖に言ってくるから、私は一度彼の顔を強く殴って、そして自分の部屋に籠るのが常だった。
昔馴染みの彼は、本当に昔から私のことなどどうでもいいと思っていて、だから付き合っていた当初も遊んでばかりで、毎晩情婦を買ったり愛人を侍らせていた。そしていつも決まって「お前のことなどどうでもいい」と私を詰った。それは私が彼と別れた後にも続き、一時期はノイローゼにだってなって、その末私は男が大の苦手になって、毎晩男を殺すようなことをしているというのに、そんな私を見て「そろそろやめたらどうだ。」なんて言ってやがる。誰のおかげで私がこんな風になったのか分かっているのか。全てはお前のせいだ。お前が1番悪いんだよ。本当はお前を殺してやりたかったけど、君が死んだら職場のみんなが可哀想だし、ボス愛用のサンドバッグがいなくなっては困るから手を出していないだけなのだ。本当、女を抱くかサンドバッグぐらいにしか使えないカス。お前なんて早く死んで仕舞えばいいんだ。
そんな私とスクアーロを見かねたルッスーリアは「でも、アンタがそんなことするのはまだスクアーロのことを思ってるからだと私は思うけど」なんて言うし、ベルフェゴールに至っては「スクアーロはまだお前のこと好きなんじゃねーの?」って馬鹿みたいなことを言う。そんなこと無いよ。私はスクアーロのことは嫌いだよ。そう言っても周りは聞いてはくれなかった。
コンコン、控え目なノック音が私を呼ぶ。私はいつものようにスクアーロに静止させられて、私はそんなスクアーロを殴って、そして部屋に篭っていた。この時だけは同僚も部下も来ないと言うのに、一体誰が来たというのだろうか。
「名前」
「なあに、マーモン」
「入ってもいいかい」
「どうぞどうぞ」
私を呼ぶのはどうやら同僚のマーモンらしく、いつも自分の利益しか考えてないこの守銭奴は何を目的に私のところえ来たのか。マーモンを部屋に招くと、彼は適当にある椅子に座って「ちょっと聞いて欲しいことがあるんだ。」
「聞いて欲しいこと?珍しいね」
「僕の事じゃないよ、スクアーロの事だ」
「……ふぅん」
「いいから聞いてよ、こっちはお金積んでもらえるからやってるんだ。」
君がスクアーロと別れたのって、もう五年以上も前になるよね。それから君は他の男と遊ぶようになったけど、それと同時期にスクアーロの周りにいた女達がいなくなったって話知ってたかい?スクアーロは顔がアレだからさ、近くに来る女達も少くは無かったんだけど、言い寄られる度に「お前らとは関係を切る」って言ってた。君が今びっくりしているのも分かるよ、君のスクアーロに対する印象は五年前から変わってないんだから。
それからというもの毎晩酒を飲むことに明け暮れて、だから気になって聞いたんだよ「どうしてそんなことをしているのかい」ってね。そしたらスクアーロ、君と別れたのが凄くキタらしくて、だから己のしたことを恥じてるんだって、でも会う度、心の中がどうしようもない気持ちになって、つい嫌なことを言っちゃう。自分でも初めての気持ちだから、って、本当馬鹿だと思うよ、スクアーロは。
「…それで、私に何が言いたいのよ。」
「スクアーロと仲良くして欲しいのさ」
「そう言われたの?彼に」
「頼まれたのはルッスーリアだよ。と言っても、金はスクアーロに請求するようにはなってるけどね」
「そう」
「だから…」
「私は嫌よ、そんなの。」
「どうしてだい」
「別れた後のスクアーロのことは驚いたけど、でも私、もう男の人は嫌いなんですもの。」
「君はことある事に男が嫌いって言ってるけど、それって遊び相手にスクアーロを重ねてるだけじゃないのかい?」
遊び相手にスクアーロを重ねて、自分はまだスクアーロを好きでいて、でもスクアーロは自分の事なんてどうでもいいって思ってるからイライラして、それでどうにもならない現実にイライラして、男を殺して、そのループに陥ってるんじゃないの?
「煩いよ。それ以上言うなら出ていってくれないかしら」
「言われなくとも出ていくよ。でもね名前、君が本当はスクアーロのことをまだ好きつていうのは、認めた方がいいと思うよ。遊び相手と肉体関係があったのも、スクアーロとそういう関係になりたいってことの現れじゃないの?」
「何を分かったことを」
私の部屋から出ていくマーモンの背中を見つめて、ひとつ「クソ野郎が」って言って、ベッドに潜り込んだ。
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つづきます
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