初めて見たのはまだ入隊して間もない頃だった。自分よりいくらか年下で、さぞ生意気なガキなんだろうなと思っていた。でも実際はそうじゃなくて、自分とは違う黒く長い髪を揺らしながら歩く姿を見て、ああ、これがジャッポーネで言うところの「ヤマトナデシコ」って奴なんだなって思った。俺は年の割に女なんて猿みたいに抱いて、性欲の対象にしかしていなかった。それほどまでに俺の近くにいた女共は艶めかしく人を煽るような奴ばかりで、でも名前は違った。年端もいかない。って理由もあるだろうが、どうやらこの暗殺部隊ヴァリアーという一組織に大切に育てられてきたらしい。何でも、俺が殺したテュールの娘だとか。気になったのはそれがきっかけで、気づけばよく話しかけていた。最初こそ警戒されたが、話しかけていくうちによく笑うようになって、そんで、気づいたら好きになってた。そうしたら、俺がテュールを殺したって事実が後ろめたくて、ずっと、ザンザスがボスの座についても言うことはなくて、でも俺の不安はよそに、名前は自分の父親が死んだことなんてどうでもいい、そんな顔をしていた。

そんで、意を決して聞くことにした。何故、父親の事を何も思ってないように振る舞うのか、


「お父さんが死んだのは知ってた。ついでにお父さんを殺したのがスクアーロってことも、全部部下に聞いたから。」

「………じゃあ、なぜ俺を責めねぇ。てめぇの親父を殺したんだぞ」

「私、お父さんと会って話したことなかった。でもザンザスは、ボンゴレ本部で何度も会って、話もしてたから…ザンザスのことは結構好き。尊敬してるし、そのザンザスをボスにしたスクアーロも、結構好き。」


そう言って、笑っていた。その笑顔だけで今まで悩んでいたことがすべてなくなって、本当に、本当に、愛おしくて仕方が無くて、気がついたら抱きしめていた。

「苦しい」

「うるせぇ」

「何、スクアーロ私のこと好きだったの?」

「……お゛お゛」

「私も」

好き。そう言って名前は俺の背中を抱いて、しばらくはそのままだった。







「何してんの?」

「昔のこと考えてた」

「へぇ〜」

「…あん時はかわいかったのになあ」

「今もかわいいでしょ」

「…ああ」

「大好き。」

「愛してる、だろぉ」

「うん。うん。」


俺は知っていた。まだ会って間もない頃、あいつが夜な夜な泣いてたことを。だから俺は、その責任を取ってこいつを一生愛すのだ。

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