ディアボロが指を紙で切ったらしい。ドロドロと体外へ流れ出て行く血液を目にした時、「まるで苺のようだ」と、思わず指にむしゃぶりついていた。
体内で自分の体液とディアボロの血が混ざり合っている。そんな現実に興奮した時のようにうまく脳が働かず、最早其処にあるのは悦楽以外の何者でもなくなった。
性行為の様だ。と、使い物にならなくなった頭でふと思った。その性行為によく似た行為では、幸福と言う喜びと苦しみが、善と悪が、白と黒が混ざり合ってマーブルカラーの様に色と色を際立たせていて、その虚像のような姿を私達は互いの瞳に映しては恍惚の笑みを浮かべるのだ。
私達のこの行為にまとわりつく愛が、混合物の様になって自らの魂でさえも巻き込み、まるで挿し木をされた木の様に増殖し続けていく。きっと私達を止める人間なぞ何処にもいないのだということが分かった様な気がして、其れが嬉しくて涙を流した。
「如何した」
と、そう聞いてくる声も瞳も、全てが美しく全てが愛おしくて、この人物と2人で生きていく事こそが、ヒルティでもラッセルでもアランでもない、私の幸福論なのだと思う
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