パートナー探し .2



「……セドリック? どこかに行くのでは?」

「あ……いや、その……リン、いま時間あるかい? ちょっと二人だけで話したいんだけど」

「いいですけど……」

 二人だけということは、スイもいてはダメなんだろうか……。不思議に思っていると、スイの方から自主的に飛び降りた。

 セドリックの足元を通って談話室へと入っていき、ドアが閉まる直前で振り返ったスイは、不機嫌そうな顔で「ファイト!」という仕草をした。

 表情と仕草がまったく噛み合っていないが、何事なのか。疑問に思うリンを、セドリックが「ちょっとついてきて」と誘う。二人は、廊下のもう少し奥まで進んだ。

 角を曲がって、迷路風に行き止まりになっている(意味も実用性もない)ところで、セドリックが立ち止まり、リンへと向き直った。そして、すっと息を吸い込む。

「あの、リン、よければ僕の……僕と、ダンスパーティーに行かないか?」

「え?」

 リンはびっくりしてセドリックを見た。祈るような目でリンを見つめてくる顔が、少し赤い。なんとなく、先ほどのディーンを思い出した。

「……もしかして、もう相手が決まってる?」

「いえ、まだです……けど」

 どうして自分を誘うのだろう? リンは思った。セドリックなら、ほかにもっといい相手がいるだろうに……。

「僕がパートナーじゃ嫌かい?」

「いいえ、そうじゃないです」

 いつの間にか、セドリックとの距離が縮んでいた。これまで取ったことのない距離感だ。彼の背が高いことに、改めて気づく。

「……どうして私を誘うんですか?」

 ぽろりと疑問を口からこぼす。セドリックは数回ほど瞬きをしたあと、リンを見つめたまま、目を柔らかく細め、頬を緩め、微笑んだ。

「僕が、リンと一緒にクリスマスを過ごしたいからだよ」

「……そう、ですか」

 心臓に悪い光景と言葉を食らったと、リンは感じた。じわじわと身体が熱くなる。驚いた心臓が不必要に血液を送り出し、その勢いによって熱を生み出しているに違いない。

「……いい、ですよ」

 硬直している舌を必死に動かして、リンが言った。視線をセドリックの顔から逸らし、うようよと泳がせる。しかし、どこを見ればいいんだろう……視線を下ろして前を向いても、セドリックの上半身を見ることになって、なんとなく緊張する。距離が近い。

「パーティーに、あなたと行きます……から、ちょっと、はなれてください」

 頬を染め、どこか必死な様子で言うリンに、セドリックは目を丸くしたあと、うれしそうに笑った。



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