W・W・W .3 「見ての通り、俺たちさ、けっこう才能あるだろ?」 「だから、この才能を生かして『悪戯専門店』を開きたいんだ」 「だいぶ前から、ずっと考えてた」 「名前だって決めてある ――― ウィーズリー・ウィザード・ウィーズさ」 交互に双子の口から出てくる言葉を聞いて、リンは目を瞬かせた。それから、なるほどと納得する。確かにこの二人がやりたがりそうな職業だ。 「いいんじゃない?」 リンが言うと、双子は目を見開いた。一瞬ポカンとしたあと、顔に興奮を浮かべ、同時にリンに詰め寄った。 「ほ ――― ホントにそう思うか?」 「嘘なんて言ってどうするの? それより、近い」 片手を前に出して制止するリンを、双子は無視した。互いの顔を見合わせて「やったぜ!」とハイタッチをしている。なんでわざわざ自分の(文字通り)目の前でするんだと呆れるリンを、ジョージが振り返った。 「おふくろは認めてくれないんだ」 「俺たちに、魔法省に就職しろとのたまった」 「君たちが政府に? その瞬間に魔法界は終わっちゃう気がするんだけど」 なかなかに失礼なことをサラリと言ったリンに、双子が気分を害した ――― なんてことはない。むしろフレッドは「まったくだ」と力強く頷いた。 「俺たちの適性を考えたら分かることだろうに、おふくろはそう望むんだ」 「この間、ついに大論争を繰り広げる羽目になった」 「そのときに何やらかされたか、分かるか?」 「やらか“し”たんじゃなくて、やらか“され”たんだ」 おもしろそうに口角を上げたリンが「で、何を?」と小さく首を傾げると、フレッドが、そこそこにボロい天井を仰ぐようにして、実に絶望的に聞こえる声を出した。 「おふくろの奴 ――― 俺たちの魂が注ぎ込まれた、注文書と計画表と製造方法のメモを焼き捨てやがった……!」 「悲劇だね」 「ショックで寝込むかと思ったぜ」 床に向かって俯くジョージに、リンは「ご愁傷様」と言った。その事件に関して特に何かを言うつもりは、リンにはない。双子の気持ちも分かるが、ウィーズリー夫人の気持ちも理解できてしまうのだ。 「また作成し直すことはできないの?」 さりげなく流してリンが聞くと、双子は顔の向きを元に戻して、しかめ面をする。それだけでもう答えが予測できてしまう………リンは内心で苦笑した。 → (4) |