母と教授の関係(2)



 翌朝、やはりスイの体調は戻らなかった。


 リンはクィディッチの観戦を諦め、ハンナたちを見送り、ハグリッドを訪ねに行った。


 突然の珍しい客人に、ハグリッドは驚いていたが、快くスイの面倒を引き受けてくれたし、リンにお茶まで出してくれた。


「忙しいのに、ごめんなさい、ハグリッド」


「気にするこたぁねぇ。奴〔やっこ〕さんはそんな大変な状態になっちょるわけでもねぇしな……ところで、リン、ケーキはいらんかね」


 笑顔で勧めてくるハグリッドに断りづらさを感じ、リンはロックケーキを一切れだけもらった。とんでもなく固く、歯が折れるかと思った。


 リンが無言で必死に食べていると「そういやぁ」とハグリッドが話し始めた。


「お前さん、ヨシノっちゅう名前じゃなかったかね?」


 ロックケーキのせいで口を開くことができなかったので、リンはただ頷く。ハグリッドは笑った。


「やっぱりそうか。え? どことなく似ちょるとずっと思っとった」


 似ている? いったい誰のことを言っているのだろう? リンが不思議に思っている間にも、ハグリッドは話を進める。


「んで、どっちが親だ?」


「どっち……って、何が?」


 やっとのことでケーキを飲み込んで、リンはようやく口がきけるようになった。


「お前さんの父親だよ。兄貴の方かい? それとも弟かい? 俺は兄貴の方だと思うが……弟の方でも納得できるわな……あいつらは、見た目以外、あんまり似とらん言われとったが、意外と根っこの方はそっくりだった」


 ……父親? リンは眉をひそめた。


 リンは、父親のことを、まったくと言っていいほど、何も知らない。西洋人で、とある純血一族の男性 ――― それが母方の伯父から聞いた全てだ。


 ヨシノの人たちは、リンの父親について話したがらないし、母に至っては、今や父に関心を抱いていないように思えた。父について知る術を、リンは持ち合わせていない。


→ (3)


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