気に入らない、だいきらい .1



 パンジー・パーキンソンは、正直に言って、リン・ヨシノという生徒が嫌いだった。


 たとえば、頭がよく、いつも点数を稼いでいるところ。おまけに、きれいな容姿で、男子生徒から人気があるところ。そして、いつも何人かの生徒を傍にはべらせているところ。そのくせ、大多数の生徒からの好意にも、一部の生徒からの僻みにも、まったく興味を示さず澄ましているところ。挙げたらキリがない。


 とにかく、パンジーは、リン・ヨシノという存在が気に入らなかった。






 ある日、スリザリン寮の談話室で友人たちとくつろいでいたとき、一年生が数人、興奮した様子で入室してきた。ヒソヒソ話していたかと思うと、チラリとパンジーたちを見て、おずおずと近寄ってくる。



「あの、先輩方、ちょっとお聞きしたいことがあるんですけど」


「なんだ?」



 ソファの背にもたれていたドラコ・マルフォイが、ゆっくりと身体を起こした。一年生たちは緊張したようだったが、一生懸命に話し出す。どうやら、いまさっき、ピーブズに襲われたらしい。


 ダフネ・グリーングラスが「まあ。大丈夫だった?」と優しく声をかけると、彼らは頷いて、さらに話を進める。聞くと、危ないところで誰かに助けてもらったらしい。そして、その「誰か」が誰なのか、知っていたら教えてほしいとのことだった。



「どんなやつだったんだ?」


「えっと……黒髪で、色白で、すごくきれいな女の人でした」



 大雑把すぎて、よく分からない。ドラコは眉を寄せて「ネクタイの色は?」と聞いた。寮から割り出すつもりらしい。一年生たちは顔を見合わせた。うち一人が、そろそろと口を開く。



「たしか、黄色でした」


「ああ……それ、たぶんヨシノだ」



 のんびり雑誌を見ていたブレーズ・ザビニが、顔を上げた。ちょっと待てと言い、鞄を引き寄せ、中を探り、アルバムを取り出す。パラパラとめくったあと、一枚の写真を抜き取り、一年生に見せた。



「ほら、この子だろう?」


「あ! そうです! この人!」


「ヨシノさんっていうんですか?」


「そうよ。リン・ヨシノ。ハッフルパフの二年生」



 微笑んだダフネの言葉を聞いて、一年生が再び興奮し出す。「僕らと一つしか違わない!」「すごい!」など口々に囁き合ったあと、彼らは「教えてくださってありがとうございました」と丁寧に頭を下げて去っていった。



→ (2)


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