謎解き(3)



「リン! 君 ――― すごいよ!」



 ハリーが、声を潜めながらも興奮して言った。



「これだ……『秘密の部屋』の怪物はバジリスク ――― 巨大な毒蛇だ! だから僕があちこちで、ほかの人には聞こえないその声を聞いたんだ。僕は蛇語が分かるから……」



 ハリーは、ハーマイオニーの傍の机にある手鏡を見た。それから、周りのベッドを見回す。



「バジリスクは視線で人を殺す。でも誰も死んではいない ――― 誰も直接目を見ていないからだ」



 まるで、ハリーの頭の中で、誰かが電灯をパチンと点けたようだった。ブツブツ呟きながら、ハリーはもう一度、羊皮紙を食い入るように読んだ。読めば読むほど、辻褄が合ってくる。



「……だけど、バジリスクはどうやって城の中を動き回っていたんだろう? とんでもなく大きな蛇だったら、誰かに見つかりそうじゃないか」



 ロンが呟いた。リンが口を開く前に、ハリーがゆっくりと言った。



「分からないけど……僕はいつも、壁の中から声が聞こえてた」


「壁の中? それ、本当に?」



 リンが、なぜか嬉しそうに聞き返した。ハリーが戸惑いながらも頷くと、リンは「じゃあ、私の推理は当たりだ」と満足げに微笑んだ。



「パイプだよ。配管。ホグワーツには電気もガスも通ってないけど、水道管だけは壁の中に巡らせてあるから。水のあるところだったら、どこからでもどこにでも繋がってるんだ」



 それを聞いて、ロンが突然立ち上がり、掠れた声で叫んだ。



「『秘密の部屋』への入口! もしトイレの中だったら? もし ――― 」


「 ――― 『嘆きのマートル』のトイレだったら!」



 ハリーが続けた。信じられないような話だった。体中を興奮が走り、二人はじっと動かなかった。リンは、その様をゆったりと眺めている。なんてマイペースな……ハリーは、頭の片隅で思った。



「これからどうする? まっすぐマクゴナガルのところへ行こうか?」



 目を輝かせて、ロンが言った。ハリーは弾けるように立ち上がった。パチリと、リンが瞬きして視線を向けてくる。



「職員室へ行こう。あと十分で休憩時間だから、先生が戻ってくるはずだ」



→ (4)


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