謎解き(1) こんな状況でも行われるという学期末試験が始まる三日前、朝食の席で、マクゴナガル先生が嬉しい発表をしてくれた。マンドレイクが収穫できる ――― つまり、石になった者たちが蘇生するのだ。 明日になれば、何もしなくともすべての謎が解けるだろう……ハリーはそう思ったが、手掛かりがあるのなら、じっとしているつもりはなかった ――― ここ数日、朝食時に、リンがハリーとロンにさりげなく、意味ありげに目配せをしてくれていたのだ。 ハリーはリンと話をしたいと思った。そして嬉しいことに、ようやくその機会がやってきた。 ** 午前の授業も半ば終わり、次の「魔法史」の教室まで引率していたのが、ギルデロイ・ロックハートだった。タイミングよく、廊下の反対側からハッフルパフ生が歩いてくるのを見て、ハリーはいましかないと直感した。 そこでハリーは ――― 普段なら絶対しないのだが、ロックハートに話を合わせた。ロンが驚いて教科書を落としたが、ハリーがリンと見つめ合っているのに気づいて、ピンと来て、上手く繋いだ。 作戦は成功だった。ロックハートは足早に去っていったし、リンも上手くハッフルパフ生の列から抜け出していた。三人はお互いに駆け寄った。 「僕ら、行きたいところがあるんだ」 「奇遇だね、私もなんだ。ただ、そこって、」 「女子トイレ?」 ロンがちょっと笑いながら聞くと、リンが頷いた。ハリーの心は弾んだ。みんな同じ考えに行き着いたのだ。 三人は、人混みから静かに抜け出して、脇の通路を駆け下り、三階の「嘆きのマートル」のトイレへと急いだ。しかし、目的地が目前となったそのとき ――― 。 「ポッター! ウィーズリー! それにヨシノ!」 三人が振り向くと、マクゴナガル先生が、これ以上固くは結べまいというくらいに固く唇を真一文字に結んで立っていた。リンが小さく「めんどくさ……」と呟いたのを、ハリーは聞いた。 「いったい何をしているのですか?」 「あ……あの、僕たち、」 「お見舞いに行こうとしていたんです」 モゴモゴとしたロンのセリフを受けて、リンが、はっきりした口調で繋いだ。ハリーもロンも、マクゴナガル先生と同じように、リンを見つめた。 「先生……もうずいぶん長いこと、スイやジャスティンの顔を見ていません」 リンが、真剣な表情で言いながら、ハリーの足を軽く小突いてきた。ハリーはパッと閃いて、リンに続ける ――― ロンの足を踏んづけながら。 「僕たちもです。ずっとハーマイオニーに会ってません ――― あの、危険だからって、面会を許してもらえなくて」 「だから私たち、こっそり医務室に忍び込んで……みんなに、もうすぐマンドレイクが採れるから……だから、あと少しの辛抱だからって、そう言うだけでもできたらと思ったんです」 ロンが慌てて頷いた。マクゴナガル先生は、リンから目を離さなかった。一瞬、ハリーは、先生の雷が落ちるかと思った。しかし、口を開いた先生の声は、奇妙に掠れていた。 → (2) |