軽いか、重いか(3)



「 ――― 冗談はさておき」


「完全に冗談で済ませる辺り、リンらしいよ」



 アーニーが大きく肩を竦めて言った。リンは無視して、彼の背後にいるウィーズリーを覗き込んだ。

 少しだけだが、頬が緩んでいる ――― どうやら、笑っていてくれたらしい。リンはニッコリ笑いかけた。



「少しでも元気が出たようでよかったよ」



 タラシか、とベティがツッコミを入れる。ハンナがベティに抗議しているのを聞き流して、リンはウィーズリーの小さな背中をポンと叩いた。



「グレンジャーは大丈夫だよ。顔は私も見てないけど、彼女、毎日元気に宿題を片付けてるみたいだし……うん。病状は不明だけど、とりあえず、襲われたわけではないよ」


「……そう……それなら、いいの」



 溜め息をついたウィーズリーの表情を見て、リンは瞬いた。

 なんとも言えない顔をしている。安堵してもいるが、同時に、何か期待が外れて落ち込んでいるみたいで、それでいて、ひどく追い詰められたかのようだった。

 リンが微かに眉を寄せたとき、ウィーズリーが顔を上げた。リンは、眉間の皺をサッと消した。



「……あの、私、ちょっと元気が出たみたい……ありがとう、リン」


「私の名前は知ってるんだね」


「ええ……とっても有名だから」



 ちょっと悪戯っぽく微笑んだあと、彼女はジニー・ウィーズリーと名乗った。

 「あらやだ有名ですって、リンさん」と笑っていたベティの足を踏みつけて、リンはジニーにハンナたちを軽く紹介し、それから彼女が帰っていくのを見送った。



「……じゃあ、私たちも帰ろうか」


「あ ――― 待って、リン。これ、落とし物じゃない?」



 歩き出したリンに駆け寄って、ハンナが小さな本を差し出してきた。ボロボロの黒い表紙の、小さく薄い本だ。受け取って観察して、リンは首を傾げた。



「これ、私のじゃないよ。ハンナたちのじゃないの?」


「うそ……私てっきり、リンが転んだ振りをしたときに落としたんだと……これ、私のじゃないわ」


「アタシのでもないわよ」



 ベティの言葉に、アーニーとスーザンも同意する。残った可能性に、リンは溜め息をついた。



「仕方ないな……届けてくるか」


「ついていこうか?」


「いや、いいよ。先に帰って、課題やってて」



 そう言って、リンは駆け出す。ハンナの「一人でなんて危険よ!」という金切り声は、無視させてもらった。



→ (4)


[*back] | [go#]