BL小説コンテスト開催中
テーマ「禁断の関係」
- ナノ -


「……お世話になります」

 ぺこりと頭を下げるリンとスイに、女性は「そんなに固くならなくていいのよ」と柔らかく笑った。その顔がスーザンによく似ていて、さすが親子だなと思った。スーザン宅の玄関での話である。

 ことの発端は、スーザンからの招待だ。「ねえ、リン、ハンナとベティが今度うちに泊まりにくるの。リンも来てくれるわよね?」なんて笑顔で圧力をかけてくるものだから、リンは断れなかったのだ。

 ちなみにハンナとベティは、すでに家族ぐるみでの交流が深いからか、気さくな挨拶を交わしたのち荷物を屋敷しもべ妖精に預けて奥へと入っていった。まったく遠慮がない。西洋人、すごい。菓子折りを渡したりするのは逆に場違いか。不安に思いつつも渡せば、ボーンズ夫人は妙にキラキラした目で受け取った。

「ありがとう。これがテミヤゲね? この目で見ることができてうれしいわ」

「……?」

「ふふ、日本の文化についてはすこしお勉強したのよ。日本では、ゲストが食べられないお菓子を出してホストが恥をかかないように、ゲストがお菓子を用意するんでしょう? すごい気遣いよね」

「………」

 いろいろ間違っている。スイはリンの肩から滑り落ちかけた。リンは無言でスーザンへと視線を向けたあと、夫人の気分を害さないよう細心の注意を払って訂正をしておいた。夫人は意外にも「あら」と気恥ずかしそうに苦笑した程度で、とくに取り乱したりはしなかった。



 いろいろあったものの無事に招き入れられたリンは、大きな庭で箒に乗ってクィディッチっぽいことをしてみたり、隠れんぼをしたり、チェスをしたり、カードゲームをしたり、たくさん遊んだ。けっこう楽しかった。

 夕食とお風呂をいただいたあとは、スーザンの部屋で本を借りてくつろいでいた。スイに至っては興味津々で部屋のなかを自由に散策している。部屋の主が許容しているので何も言わないが、もうすこしわきまえてほしいとリンは思った。

「ね、リン! リンのの相性占いもしていい?」

 ハンナが振り返って聞いてきた。スーザンやベティと一緒に床に座り込んで、なにかの雑誌で占いをしてきゃあきゃあ騒いでいたのだが、ついにリンへと矛先を向けることにしたらしい。リンは好きにすればと返した。どうせもうベティは占いはじめている。

「あら、ジャスティンとは相性が微妙なのね、リン」

「微妙ってどういう意味で?」

 リンが尋ねると、ベティから「男性から女性への切ない片想いなんですって」と返ってくる。ハンナとスーザン、スイが「あー……」と納得の声を出した。リンは沈黙をもって返した。

「セドリックとの相性はどう?」

 わくわくした表情のハンナがリクエストすると、ベティが「それよ、それ!」と顔を輝かせた。心なしかスーザンも興味深そうな表情でのぞき込んでいる。リンは呆れた目で見守った。

「……悪くは、ない」

「ふつうよりちょっといい感じ?」

「あら」

 こそこそと呟き合ったあと、3人はリンを振り返った。リンが瞬きをして首をかしげると、奇妙な笑い声を上げてまた雑誌へと向き直る。わけがわからないとリンは思った。

「リン本人としてはどうなのよ」

 ついに雑誌を放り投げたベティが、リンのまえへと移動してきて問うた。ハンナとスーザンも倣う。スイもどさくさで肩へと戻ってきた。「どうって、なにが」と返したリンの手から本がもぎ取られた(スーザンが眉を吊り上げて回収し、本が無傷か確認した)。

「いいなって思うひと、いないの?」

「いいって、どういう意味で」

「カッコいいとか、こんなひとなら恋人にしたいとか!」

「……そういう話題、好きじゃない」

 渋面で呟いたリンの頭が、ベティの手によってはたかれた。「アンタそんな恵まれた容姿しておきながら―――!!!」とわめかれて、リンの眉間に皺が寄る。うるさい。ベティの額に指弾が決まった。

「うちの寮ではセドリックがいちばん人気だけど、リンもカッコいいと思う?」

 スーザンが言葉を選んで聞いてきた。リンは一拍おいて「まぁ」と肯定を示した。たしかにカッコいいひとだと思う。思慮分別があるし、言動も紳士的。ひとを気遣うやさしさや、公平な判断力や正義感もある。いいひとだ。

「じゃあ、もしセドリックに恋人ができたりしたらどう思う?」

「どうって言われても……私にはべつに関係ないし」

 ハンナの問いに淡々と返すと、ハンナとスーザンがガクッと脱力し、スイには頬を叩かれた。ベティは「だからリンはダメなのよ」とため息をつく。なんとなくベティにはイラッときたので、もう一発指弾を見舞っておいた。

「もう。リンったら……あ、じゃあ、ロジャー・デイビースは?」

「だめよ、ハンナ。彼は……あまり一途なひとじゃないもの」

「じゃあ……双子のウィーズリー!」

「だめね、ダメダメ。性格がガキすぎ。リンと合いそうに見えない」

「ならベティはだれ推しなの?」

「えー……ジン・ヨシノとか………ダメだ、甘さが足りない」

 遠慮なく好き勝手に言う三人を見て、リンはため息をこぼした。楽しそうだからいいけど。スイを撫でると、小声で「女子だから仕方ない」と言われた。

「……そろそろ寝ない?」

 話を終わらせようと声をかけたが、夜更かししてパジャマパーティーするのがお泊まり会の醍醐味なのに何を言うと説教された。そんなルールがあるのかと吃驚するリンの背を、笑いを堪えるスイが尻尾でポンポンとあやすようにたたいた。



**あとがき**
 雪様リクエスト“世界連載でヒロイン含むハッフルパフ女子組がスーザン家に泊まりにいく話”でした。ほのぼの女子会的な、とのことでガールズトークを中心に。夢主だけアウェーですが仕方ない。
 夢主ってホグワーツに行くまで女友達いなかったから、はじめてのお泊まり女子会。パジャマパーティーとかカルチャーショックだったと思います。「夜中に菓子を食べるのは健康に悪い」とか水を差して叱られるシーンがうまく入れられなかったのが悲しい。



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