| 綱吉くん成り代わり主人公(♂)が、がんばっていく話。 なんとなく原作に寄っていく予定だった。
綱吉くんとはちがい、落ち着いた性格の子。けっこう成績も優秀。人付き合いも上手な方。どことなくふわふわつかみどころがない部分もある。
先頭に立って引っ張るより、なかに入って周りに合わせるタイプ。そつがないけど、たまにひどく「あー、なんか合わせるのめんどくさいなあ」とものぐさになる。そんな自分に正直で、友達に誘われても気分が乗らなければ上手に断る。途中で飽きたらそれっぽい理由を言ってやめる。
基本的にツッコミだが、ボケの度が過ぎたりツッコミ入れるのが面倒になったりすると、被害が出ない範囲の騒ぎは放置する。どこかに被害が出る場合は、蹴るか殴るか暴言を吐くかして止めさせる。
上記の性格になっている理由は、俗にいう前世の記憶があるから。対人スキルの多くはここから学んだ。
デフォルトの名前は飛夏。ひなつ。 ツナを引っくり返してナツ → ツナを数字で表わしたら 27 なので、じゃあ 17 にしよう →「ひ」を先頭にくっつけた → ひなつ。
以下、試し書き。というか、発掘したデータ。たぶん高校時代のもの。ファイルの最終更新日に 2013 年 5 月って書いてあるので。
▽ ▽
突然だが、僕には前世の記憶がある。
いや、冗談でも頭がおかしいわけでもなく、本当に。だけど、僕は馬鹿じゃないから、決して口にはしなかった。異質なものとして扱われるのなんて真っ平御免だから。
そして僕はいま、一人分の余分な記憶を持て余しつつ、あくまで僕の人生を生きている。
「ヒナツ ――― !!」
誰かに名前を呼ばれて、廊下を歩いていた僕は立ち止まって振り返る。階段のところに、クラスメイトが何人か集まっている。そのうちの一人が、僕に向けて手を振っていた。
「やあ、どうした?」
軽く手を上げる形で彼に応えて、僕は首を傾げた。いったい何の用だろうか。何か約束でもしてたかな……と記憶を辿るが、そんな覚えはなかった。
「俺らサッカーやんだけど、ヒナツも混ざんね?」
お誘いか。納得しつつ「今から?」と呟いて腕時計を見て、僕は思案する。今日はとくに予定もないし、学校で遊んでいく時間だってある。これといって断る理由はない。だけど正直に言ってしまえば、いまはサッカーの気分じゃない。またの機会にさせてもらおう。
「ごめん、今日はそんなに時間ないから、また今度でいい?」
「おー、了解」
んだよ、ヒナツやんねーの? つっまんねー。他のメンバーから不満の声が上がった。悪い、と僕は笑う。しゃーねーよ、ヒナツも忙しいんだって、と別の人が僕の肩を持ってくれる。そして、最初に声をかけてきた人が、じゃあヒナツ、気ぃつけて帰れよーと締めくくったのを合図に、僕と彼らは軽く挨拶をして別れた。
そこからまっすぐ玄関へ向かって、靴を履き替え、少し目立つ感じの女子グループからの挨拶に応えて、部活の掛け声に混じる黄色い歓声を無視して、校門を出た。
「……」
通学路を歩きながら、少しだけ眉を顰〔ひそ〕める。なんか、視線を感じる。うわぁ僕もついにストーカー被害者に? なんて思えるような視線ではない。そんな熱っぽく見つめてくるようなものじゃなくて、事務的というか無機質に観察されている感じだ。上手く言えないけど、例えるなら、そう―― 監視カメラ、みたいな。
そんな視線を、実は朝から感じていた。
「…………」
まぁいいか。危害を加えてくる様子はないし、気にしないでおこう。そう結論付けて、僕はポケットからスマホを取り出す。あ、母さんからメールきてる。
メールを開いて、今日は早く帰ってきてね、という文面を見て、何だろうと疑問に思いつつ、僕は足を速めた。
「 ――― ただいま」
個々の部屋を繋いでいる廊下に響き渡るよう声をかけたあと、玄関で靴を脱いでいると、リビングのドアが開いて母さんが顔を出した。僕の姿を見ると嬉しそうに笑う。
「お帰りなさい、ひー君。思ってたより帰ってくるの早かったわね」
「メールに気づいて急いできたから」
「やだ、そんなに慌てなくてよかったのに……」
ごめんなさいね、疲れちゃったでしょう? と気遣わしげに僕を見てくる母さんに首を振って笑顔を浮かべる。
「それより、今日、何かあるの?」
突然連絡してくるなんて何事なのかと尋ねると、母さんは一瞬きょとんと目を丸くしたあと「ああ!」と声を上げて、胸の前でパチンと手を合わせた。
「あのね、今日、ひー君の家庭教師が来るのよ」
「……はい?」
一瞬、僕は言葉が出なかった。え、なんで? 自分で言うのもアレだけど、僕は成績がいい方だ。学校生活も上手くやっていけてるし、必要ないはず。
僕の頭の中で疑問が渦巻くが、母さんが一枚の紙をエプロンのポケットから出したので、意識をそれに向ける。母さんは機嫌良くそれを広げ、書いてある文字を読み上げた。
「 ――― お子様を次世代のニューリーダーに育てます。学年・教科は問わず。リボーン」
「……何、それ」
どんな謳い文句、と思う僕に対して、母さんは「ポストに投函されてたのよ」と笑顔で言う。いや、ポストにそんなもの入ってたら怪しいと思ってほしい。若干呆れる僕の様子には気づかないで、母さんは再びチラシをじっくり眺めて、僕を振り返る。
「ステキでしょ? こんな謳い文句見たことないわ」
満面の笑みだった。もう何を言ったらいいのか分からない。とりあえず、警戒心なるものを持ってください。そう母さんに言おうとしたときだ。
何かが、頭の中で警報を鳴らした。僕は反射的に母さんの方に一歩近づいて庇うように立ち、何かに促されるまま、視線を足元へ向けた。
「 ――― ちゃおっス」
そこには、黒いスーツに身を包んだ赤ん坊がいた。
「………お前、何だ」
誰、ではなく、何。意図的にそう言った僕に向かって、その赤ん坊は不敵に笑った。
「オレはリボーン。今日からお前の家庭教師だ」
△ △
ここで終わっている。続きは、シリーズくらいの軽さでなら書くかもしれない。需要があれば。なければ完全に凍結。
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