仮題:vs. Twins


 一卵性双生児の主人公(♂)と、ウィーズリーの双子がなんやかんや関わってく話。
 たぶん長編かシリーズになる予定だった。


 同じ学年で、どちらの組も「そっくり」と有名。

 ウィーズリーの方は、顔も性格も言動も本当に似ている。だけど、主人公たちの方は、主人公が合わせているからそっくりなのであって、本当はまったく性格と言動が似ていない。

 双子が多く生まれる家系で、一族は、二つのものが同じであることに妙な誇りを持っている。だから一応なるべく相方に合わせようと努める主人公。だけど、最近なんだか疲れてきている。しかし決別するタイミングがつかめない。

 そんなとき、もう一組の双子ウィーズリーたちと邂逅(それまで話したことがなかった)。巻き込まれ、なんだかんだと付き合っていくうちに、だんだん、相方とはちがう自分のアイデンティティを確立していく。

 ……そんな成長物語になったらいいな。と思いつつ、具体的なアイデアが思い浮かばず、現在お蔵入り状態。もったいないので、ここに記しておく。

 一応、考えた苗字はクロムウェル。響きが気に入っただけ。主人公と相方のデフォルト名はダニエルとエリオット。フレッドとジョージのイニシャルが F と G なので、D と E にしてみただけ。


 以下、試し書き。

▽ ▽


 彼と僕は一卵性双生児だ。


 ほとんど同じ時間に生まれてきて、同じように育てられ、同じことをして同じだけの時間を生きてきた。そんな僕らは「とてもそっくりだ」と言われる。


 同じ顔と同じ声。身長も体重も同じ。同じ反応や仕草を同時にする。いつも二人同じような服を着ていて、趣味も好みも性格も行動も思考も同じ。


 皆からそう言われるけど ――― そして僕でない方も「同じ」(「瓜二つ」ではなく「同じ」)であることを誇りにすらしているが ――― 僕は、そうは思わない。


 本当にまったく同じだったら、わざわざ一つだったものが二つに分かれた意味なんてないんじゃないかなって思う。一つのままでもよかったじゃないかって。


 無機物ならともかく、命あるもので、まったく同じものなんていらない ――― ……って。





「あ、双子だ」


「どっち? ウィーズリー? それとも、」


「クロムウェルの方」


「へえ、どこ?」


「ほらあそこ。見えるだろ? こっちに歩いてくるの」



 ホグワーツ校内を二人並んで歩いていると、いつもこんな声に付き纏われる。僕らは見せ物か珍獣か何かか。見るな、散れ。と、僕は心の中で毒づく。だけど誰も散らないし、むしろ集まってくる。


 だから一緒にいるのは好きじゃないんだ。好奇心旺盛な奴らが見てくるから。どっちがダニエルでどっちがエリオットか見分けようと頑張るから。溜め息をついて踵を返して寮に戻りたい気持ちでいっぱいだったが、意に反して、足はゆったりと歩き続けるし、口元は緩く吊り上がり出す。


 僕の意思とは関係なく、反射という長年の習慣に則って、身体は動く。誰かが僕らを見分けようとしたときには、こういう反応・言動を取るって昔から決まっているわけ。誰が決めたかなんて、聞かなくても予測つくだろう? 僕ではない方さ。


 ちらりと隣の兄弟へ視線を向けると、目が合った。彼は ――― ということは僕もなんだけど ――― とても楽しそうに笑っていた。


(僕らを見分けるなんて、できるわけないじゃないか)


 そんな声が聞こえた。彼が言ったとか、そういうのではなく。彼の思考が言葉という形を取って僕の頭の中に直接響いてくる感じ。自分で言っててよく分からないけど。要するに、テレパシーみたいな? 双子の神秘みたいな? みんな言ってるからそういうものなんだろうな。


 あ、皆っていうのは、僕の一族のこと。僕らの一族は代々、一世代に少なくとも一組は必ず双子が生まれるという不思議な家系だ。だから、僕の兄たちも双子だし、父さんも双子。従姉妹も双子。祖父様も双子。彼らの妹の大叔母とか僕らの妹、従兄とその息子と娘(つまり僕の甥と姪)とかは違うけど。


 とにかく僕の一族には双子が多い。他の一族から見たら不気味なくらい多いが、うちではこれが普通らしい。むしろ双子がまったく生まれない家庭(例えば、さっき言った僕の従兄とか)の方が異常だと思われている。嫁とか婿とかは本当に大変。意味不明で理不尽な責任を押し付けられるから。特に嫁は集中攻撃食らうから。怖いね。


 ……あれ、話が逸れてる。戻そう。


 その双子の神秘ってやつは、僕らの場合、彼から僕への一方通行だ。どういうことか具体的に言うと、僕は彼の思考が読めるけど、彼は僕の思考は読めないってことだ。うん、意味が分からない。なんで一方的なのか不思議でならない。


 ほかの双子たちは双方向にできるらしく、僕の兄弟が「僕らはテレパシーなんて使えない」と言ったときは驚かれた。だけど彼が「でも僕らは、テレパシーなんて使わなくても同じことができる。つまり、僕らは本当に同じものなんだ」と胸を張って言ったら、皆あっさり納得した。彼の思考を読み取った僕が意図して行動しなければ、まったく違うことをするという真実に気づかないで。


(………疲れるなぁ)



△ △

 ここで力尽きた。


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