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 なんかたまに人間の身体っていいなぁって無性に思うときがあるんだよね。たとえば女の子たちがメイクしてたり、楽しそうにショッピングしてたり、恋人たちがカフェでデートしてたりするのを見るとさ。昔が懐かしいなーって。

 ……なんて呟いたのがいけなかった。鏡に映る白い顔を見つめながらスイは思った。そう。白い肌。いつも鏡に映るもふもふの毛に覆われた顔ではないのだ。なぜなら今はリンと身体が入れ替わっているから。

「……いったいどうしてこうなったんだよ……」

「なぜって、君が言ったんじゃない。たまには人間の身体で過ごしたいって」

「だからって身体入れ替える?」

「……でも憑依だと二人一緒に表に出てくることができないし、かと言って人間の器を新しく創り出すのは時間的にも倫理的にも厳しいし……」

「そういう話じゃないんだけどなあ……」

 ため息をつくと、アーニーが「お互い気苦労が多いね」と苦笑を向けてきた。彼の横のジャスティンは、店内の室温は問題ないか、疲労や空腹感はないかと、アーニーの肩の上にいる猿、もといリンに確認しては大丈夫だと返されていた。相変わらずだと眺めて、またアーニーへと視線を戻す。

「ていうか、君らも君らだからな? 友人と猿の中身が入れ替わったなんて事態、冗談に取るか取り乱すかがふつうの反応だろ。何ごく自然に受け止めてんの」

「もちろん、俄かには信じられない話ではあるよ。だけどリンは決して悪質な嘘をつく人間じゃない。僕たちが非現実的だと判断するような事象であっても、ヨシノの卓越した魔法をもってすれば実現可能であるということも理解している。友情に誓って、彼女の説明を疑うなんてことは、」

「スイッ!」

 神妙な顔で身振り手振りを交えながらの演説が唐突に打ち切られた。実に不憫だと思いつつも、フォローはしないことにした。

「これすっごくかわいい! ね、お願い、着てみて?」

「う……」

 甘ったるい。スイですらそう表現するような、かわいらしすぎる服。マグルのファッションで例えるならロリータだろうか。せめてゴスロリでお願いしたい。参考までに男子を見ると、頬がやや引き攣っていた。ちなみにリンは、購入しない前提であれば今日は何を試着しても構わないとのことだった。投げやりである。

「リンには合わないでしょ」

「こっちの色はどう? 色合いだけでもリンの雰囲気に合わせたほうがいいと思うわ」

「これがいいの。大丈夫、リンはかわいいから何でも着こなせるわ!」

 そのあふれる自信はどこからくるのか。やけに生き生きしているハンナに、ベティとスーザンは顔を見合わせたのち匙を投げた。ひとまず着るだけ着てみたらと送り出される。スイはいやいやいやと手を前に出した。ノーのジェスチャーだ。

「もうそろそろ店を出ようよ。買う気がないのにあれこれ試着だけ繰り返してたら迷惑だって。それにボクお腹が空いてきたから、何か食べたいな」

「ああ、やりたいことリストに恋人とカフェデートってあったもんね」

「ないよそんな項目」

「それなら、アーニー、恋人役になってエスコートしてあげたらいい。アーニーは教養ある男子ですから、マナーも完璧です。何も心配はありませんよ、リン」

 スイの否定を無視して、ジャスティンがリンに微笑みかける。ベティが「あら意外」と呟いた。

「てっきりアンタがエスコートしたがるかと思ってたわ。せっかくこんなに可愛くおめかししたリンの恋人役ができるんだから」

 ベティの指がちょんとスイ(つまりリン)の頬をつついた。リン相手なら指をいけない方向に折り曲げられるところだが、スイは甘んじて受け入れた。むしろ誇らしげに微笑んだ。なにせ今日のリンは最強にかわいい自信がある。

 メイクも髪型も服装も、それはもう好きなようにさせてもらった。元が美少女なので、手を加えたらもう最強だ。視界に入る人間全員からの視線を感じる。すごく気分がいい。ただ肝心のリンは「へぇ、スイってそういうのが好きなんだ」と斜め上の反応をしてきたが、まぁ、それはいいだろう。

「……リンじゃなくてスイの恋人役だろう? 見た目がリンだとしても、中身が別人なら興味ないよ」

「すごいな、君」

 スイは思わず尻尾を振りたくなった。真顔かつ温度のない声で言い切ったジャスティンがいっそ感嘆に値する。一方のリンは何ともいえない顔をしていた。しかし何も言わないことにしたらしく、ただため息をついただけだった。

「ひとまず店を出ようか。立ち話は迷惑だから」

 ジャスティンが真っ先に頷いて歩き出す。スイたちも続いた。店から出て一つ目の角で、ハリー、ロン、ハーマイオニーと出くわした。ハーマイオニーが悲鳴に近い黄色い声を上げる。

「リン?!! どうしたの?! 今日すっごくかわいいわ! もしかして誰かとデート?!」

 違うけど。と言おうとして、リンは口を閉じた。興奮している状態のハーマイオニーをさらに混乱させる事態は避けたい。面倒だ。リンはスイに任せることにした。暇になったので、アーニーの頭によじ登ってみる(たまにスイがやっている)。……楽しい。いそいそと手足を動かすリン(小猿)を、ジャスティンやハンナたちはつい息をひそめて見守り、アーニーはひたすら硬直していた。

 一方のスイは困惑していた。こんなにも興奮したハーマイオニーと相対するのは初めてだ。口をはさむ隙すらないので、どう対応したらいいのか見当がつかない。助け舟を求めて振り返った先に、アーニー登りをしているリン(と見守るみんな)を見つけて「何してんだよ」と思った。ギリギリ口には出なかった。

 頼りにできそうにない面々から視線を外して、未だ喋り続けるハーマイオニーをスルーして、ロンが目に入る。真っ赤な顔でポカンと口を開け、じっとスイを見ていた。そういえば面食いだったな。さらに視線を流せば、ハリーと目が合った。緑の目が瞬きを何度かして、困惑の色を宿す。

「……リンじゃない、よね?」

『さすが主人公、鋭すぎる……』

 思わずメタ発言をしてしまったが、日本語なのでセーフだろう。

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 最後の三行が書きたかった。そのあとの展開はご想像にお任せします。
 スイプロデュースの夢主は最強にかわいい。語彙力が足りなくて細かい描写ができなかった。



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