×
「#切ない」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -



 試験明けの休日、****・ゴールドは湖に向かって歩いていた。先日の出来事を思い出して赤面するのを抑えて、自分を罵倒する。ハリーたちが魔法省でたいへんな目に遭っていたというのに、さすがに不謹慎すぎる。

 とはいえ、やはりどうしても頬が緩む。なにせ人生で初の彼女ができたのだ。ハリーと同じくたいへんだったジニーやロン、言伝でハーマイオニーやハリーからも祝われたので、たぶん浮かれてもいい案件だと思う。

「****!」

 自分の名前を呼ぶ声に、思考を切り上げる。振り返ると、ハンナが駆け寄ってくるのが見えた。どうしようかわいい。しかし何たることだ、彼女より先に待ち合わせ場所に到着してスマートに待機している予定だったのに、道中で出会ってしまった。

 自分の段取り能力を内心で糾弾しているあいだに、ハンナが追いついてきた。いったん脳内会議室のドアを閉めて、ハンナに笑いかける。

「やあ、ハンナ」

「こんにちは、****」

 何とはなしに手を差し出してみると、にっこり笑ったハンナが手を重ねてきた。すごい、これが恋人効果。ひっそり感動しながら、できるだけスマートに手をつないで歩き出す。手汗が心配だ。気をまぎらわそうと話題を探して、ふとハンナに目をとめた。

「ハンナ、今日は三つ編みじゃないんだな」

「そ、そうなの。たまには髪型を変えてみようと思って」

「そっか……いつものおさげも女の子らしくてかわいいけど、今日のも大人っぽくてきれいだな」

 なぜか唐突にハンナが足を止めた。****も慌てて立ち止まって振り返る。真っ赤な顔をして目に涙の膜を張っているハンナを見て、心臓が飛び上がった。

「ごめん! 俺なにか言葉間違えた?! 傷つけるつもりはなかったんだ、ごめん!」

「だ、大丈夫。違うの。あの、褒められて恥ずかしくて……」

 褒められて恥ずかしい……ということは、傷つけたわけでも不快にさせたわけでもないらしい。ホッと胸を撫で下ろして、****はつないだ手にぎゅうと力をこめた。ビックリしたのか見つめてくるハンナと目を合わせて、笑う。

「涙、どっかいったな」

 ぱちくり瞬きをしたハンナが、ゆっくり笑った。

**

 湖の畔の木陰に座って、いろいろと話す。主な話題が試験なのは、受験生ならではだろう。来年は****も受験なので、助かる話題ではある。ジニーにはムードが云々と怒られそうだが、ハンナが話したい話題がいちばんだと個人的に思う。

「それで、結局試験が一時中断になっちゃったの。今考えてみても、なんでフラミンゴを大量発生させたのか、ぜんぜん分からないのよ」

 変身術の実技での失敗談を語るハンナに、****は苦笑した。ハンナは緊張すると何かを大量発生させるという特技を持っているらしい。DAで体験済みだから想像はしていたが、裏切らない人だ。

「試験の点数的にはマイナスかもだけど、俺は純粋にすごいと思うけどな」

「何が?」

「生き物を大量に発生させられるとこ。意図してないことだろうけど、そんなことができるだけのポテンシャルがあるってことだろ? やっぱりハンナはすごい魔女の卵だよ」

 にこにこと言われて、ハンナはきょとんとしたのち、頬を緩めた。

「ありがとう。やっぱり****はとっても優しい人ね」

「……そうかな。ネアカとはよく言われるけど、ひとに優しくできてるかは、それとはまた別物だろうし」

 ネアカ発言も場合によっては無神経な言葉にもなり得る。幼少期の苦い思い出がよみがえって、苦笑がもれる。

「少なくとも私は優しいって思ってるから大丈夫!」

 キラキラ笑顔でハンナが言った。****は瞬きをして、小さく吹き出した。なるほど、ハンナに優しくできているならいいか。「ありがとう」と礼を言って、****は空を見上げた。

「……強くなりたいなあ」

「どうして?」

「『例のあの人』が公的にも戻ってきたわけだから、これからイギリス全体で襲撃とか事件が起こるはず。俺はハリーにつくし、おまけにマグル出身だし、格好の攻撃対象だろ? 自分と周りの人たちを守れるくらいには強くなりたいな」

「****は努力家だから、きっと強くなれるわ」

 以前、図書室でジャスティンが****に声をかけにいったとき、****のノートはすごくきれいにまとめられていたと、ジャスティンが言っていた。教科書にもフセン(マグルの商品とジャスティンが説明してくれた)が貼られ、たくさん書き込みがされていたらしい。

 先生や生徒たちが口をそろえて、****・ゴールドは優秀だと言っている。一年のときから主席らしいことも、ハッフルパフの後輩から聞いた。以前もらった「スノードーム」など、しばしば魔法の品を製作しているし、腕はたしかだ。

 自信をもって太鼓判を押すハンナをポカンと見つめて、****が眉を下げた。

「買いかぶりすぎだよ、ハンナ。俺はむしろ素質は劣等生さ。時間をかけて理論やコツを整理して、何度も反復して、それでようやく身につけられるんだから」

「そうやって努力できる****がすごいって話なのよ」

 ムッとした表情でハンナが言った。学年主席が「素質は劣等生」だなんて、謙遜を通り越して卑屈もいいところである。そんなことを言ったら生粋の天才以外みんな劣等生になってしまう。

「****はひとのことはすぐ褒めてくれるのに、自分のいいところはぜんぜん見つけられないのね」

「……それハンナが言う? ハンナだって自分のことはすごいネガティブじゃん」

「う……」

 ハンナが言葉に詰まった。自覚はあるらしい。苦笑する****の前でグルグル考え込んで、やがてハンナが顔を上げた。何やら自信に満ちた顔をしている。

「じゃあ、私たち相性がいいわね。お互いに相手のことフォローし合えるもの」

 なんだか無理やりまとめた感があるな。なんて感想は胸の奥にしまって、****は「そりゃいいや」と笑いかけた。女の子が出した意見を私的な感想や感情だけで突っぱねるのはよくない。

「ハンナのそういうとこ、かわいいと思う」

 顔を真っ赤にしたハンナに「そういうことを短時間で何回も言わないで!」と怒られた。女の子への「かわいい」「きれい」「ありがとう」「ごめん」は素直に口に出さないといけないと教えられて育ってきたが、もしかして魔法界では違うんだろうか。心配になったので、今度ジニーに聞いてみようと思う。


****
 「彩り」ハンナ主は、くっついたらすごいかわいいカップルになると思う。お互いに尊重し合えるよきカップルを目指したい。



Others Main Top